最新記事

教育

TOEICスコアが日本より150点も高い韓国でも、英語が話せるとは限らない

2019年11月8日(金)19時00分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)

ybm_school.jpg

ソウル市内にある語学学校。アイドルの広告とともに人気講師の写真も通りを飾る

韓国の過熱する英語教育

IMF通貨危機後の2000年ごろから韓国の英語学習熱は一気に高まり、2007年ごろには留学ブームのピークを迎えた。韓国国内への不安があるなか、若者やその親たちは海外への就職に目を向けた。また韓国企業もグローバル化が進むにつれて語学に長けている人を採用するようになった。少子化が進むにつれ、教育にお金をかける親が増えたことも英語教育に力を入れた理由の一つだろう。

大学でも学生に英語の資格取得を積極的に推奨している。筆者はソウル芸術大学の映画学科に入学した。もちろん授業の大半は韓国語なのだが、英語の教材や英語の記事、英字新聞の映画レビューを授業に取り入れる教授も多く、また字幕なしでの欧米の映画の試写も行われた。韓国で映画の勉強しているのにもかかわらず、韓国語ではなく英語に頭を悩まされるとは思わなかった。これは韓国に留学した日本人では珍しい話ではなく、一般の大学に行った日本人留学生からもよく耳にする悩みだ。

また、芸大卒業後、映画で有名な韓国の某大学院に映画で編入した同期生は、修了条件の一つがTOEICで既定の点数をクリアすることだった。彼は海外に行く予定などないのにも関わらず、自身の短編映画を監督する傍ら、必死に英語の勉強をしなくてはならなかった。映画の専門大学ですらこの通りなのだから、一般の大学生たちがどれほど英語試験の点数にこだわっているかご想像いただけるだろう。韓国の大学は英語くらい喋れるのが当たり前というスタンスなのだ。

大勢が熱中すると、そこには自然とビジネスが生まれる。韓国でももちろん語学ビジネスは拡大していく一方だ。ソウルの街を歩いていると、英語塾の看板をあちこちで観ることができる。特に大学が多く集まる梨大/新村周辺には、時事語学院やパゴダ語学院をはじめ、大小さまざまな語学学校が集まっている。前を通ると、人気講師の写真が張り出されているが、特に人気TOEICティーチャーは広告塔になり、モデルさながらにメイクとドレスアップした写真が英語塾の看板に大きく張り出されている。

競争が過熱すれば、不正な手法に頼るということも発生する。裏口入学があるように、英語民間試験の代理受験が行われていることが発覚したのだ。釜山警察署は、2018年11月8日、代理受験業者一行35人を検挙した。また、SNS上では、TOEICをはじめ各種英語試験の偽造点数証明書を制作する会社の広告が掲載されて問題視されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、金利の選択肢をオープンに=仏中銀総裁

ワールド

ロシア、東部2都市でウクライナ軍包囲と主張 降伏呼

ビジネス

「ウゴービ」のノボノルディスク、通期予想を再び下方

ビジネス

英サービスPMI、10月改定値は52.3 インフレ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中