最新記事

気候変動対策

ベビーブーマーの「老害」はもうたくさんと、若者世代が年齢差別のスラングで反撃

Politician Responds to Heckle in Parliament by Saying 'OK Boomer'

2019年11月11日(月)17時25分
カレダ・ラーマン

人気のOKブーマー・パーカーをあしらったニューヨーク・タイムズ電子版の記事 New York Times

<ニュージーランド議会で若手議員が、野次を飛ばした年配議員を「OKブーマー」の一言で黙らせ、話題になっている。OKブーマーはベビーブーム世代を揶揄するスラング。世代間闘争の狼煙が上がった?>

ニュージーランド議会で演説をしていた25歳の政治家が、年配議員の野次を一言でやりこめ、話題になっている。

緑の党に所属するクロエ・スワーブリックは11月5日、2050年までに二酸化炭素排出量ゼロをめざす気候変動問題関連法案を支持する演説を行っていた。

「世界の多くの指導者が何十年も前から、(気候変動が)これから起きることを知りながら、黙っていたほうが政治的に都合がいいと手をこまねいてきた」と、彼女は語った。「私の世代、そしてその後の世代にそんな余裕はない。私は2050年にも56歳だ......」

そこまで語ったところで飛んだ野次に、スワーブリックは「OKブーマー」の一言で黙らせ、演説を続けた。気候変動が人類を脅かしはじめる頃までには死んでしまう無責任なベビーブーム世代は黙ってろ、という意味にもとれる。

<参考記事>「気候変動が続くなら子どもは生まない」と抗議し始めた若者たち
<参考記事>「就活ばかり」日本の若者が世界に取り残される

老害にうんざり

ミレニアル世代やZ世代と呼ばれる10~30代の若者の間では今、60~70代のベビーブーム世代を揶揄する「OK ブーマー」というスラングが爆発的に広がっている。ブレイクのきっかけは、「TikTok(ティックトック)というソーシャルメディアに、ベビーブーム世代の「上から目線」をからかう動画が無数に投稿されたことだ。

この投稿をInstagramで見る

Let's get it trending #okboomer

Sam Hughes(@god_damn_sam)がシェアした投稿 -

ニューヨーク・タイムズは、このスラングを「何もわかっていない年配の人々」への鋭い反撃であり、「うんざりした何百万人もの子供たちの叫び」と表現した。記事のタイトルは「OKブーマーは友好的な世代間関係の終わりを告げる」で、サブタイトルは「これは戦争だ」で始まる。

スワーブリックは後にガーディアンの論説欄で、自分がOKブーマーと言ったのは「とっさの思い付き」だったが、それは「各世代が共有する疲労感」の象徴でもあったと詳しく解説した。

「気候変動の対策をする時間がどんどん失われていくなか、将来このツケを払わされる若い世代に共有する徒労感を象徴した言葉だ」と、スワーブリックは書いた。

「議場の野次を聞いて、多くの常識ある人たちが政治に失望している。当然の報いだ」

結局スワーブリックの演説は成功し、ニュージーランドの議会は彼女の「ゼロカーボン法案」を可決した。

2050年までにニュージーランドの温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることと、地球温暖化防止のための国際枠組みを定めたパリ協定に基づいて、国の義務を果たすことをめざしている。

一方、ドナルド・トランプ大統領はこの画期的な合意からの撤退を発表しており、アメリカ政府は最近、正式な手続きを開始した。

20191119issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

11月19日号(11月12日発売)は「世界を操る政策集団 シンクタンク大研究」特集。政治・経済を動かすブレーンか、「頭でっかちのお飾り」か。シンクタンクの機能と実力を徹底検証し、米主要シンクタンクの人脈・金脈を明かす。地域別・分野別のシンクタンク・ランキングも。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税の影響で

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中