最新記事

ブレグジット

EU離脱「再々延期」で混迷イギリスは総選挙へ

2019年11月7日(木)17時50分
ジョシュア・キーティング

議会前でジョンソン批判のポスターを掲げる離脱反対派(10月30日) YARA NARDI-REUTERS

<またも延期のEU離脱、12月12日に行われることになった総選挙の争点と各党の動向は?>

3月29日、4月12日、そして10月31日――ブレグジット(イギリスのEU離脱)が実現しないまま、またも期限が過ぎ去った。EUは10月28日、離脱の3カ月延長を求めるイギリスの要請に同意。これで次の期限は1月31日ということになる。

フランスのマクロン大統領はもっと短い延長を主張したが、イギリスには現在の膠着状態を打開する総選挙を実施するための時間が必要だという点でEU各国の意見は一致した。

これまでと同様、今回の延期も「フレクステンション(柔軟な延期)」であり、議会が新しい離脱合意を承認すれば、イギリスは1月31日より前に離脱できる。だが、それは希望的観測のようだ。

そもそも1月31日に間違いなく離脱できるのか。イギリスのジョンソン首相はEUに対し、「1月31日以降のさらなる延期は不可能」だという点を明確にするよう希望した。だがEUのトゥスク大統領は、今回の延期が「最後のものになるかもしれない」と言っただけだった。

ジョンソンは9月初旬から総選挙を呼び掛けてきた。そのためには下院の3分の2の賛成が必要だったが、野党・労働党は10月31日の「合意なき離脱」の可能性が消滅するまで、選挙の実施を拒否し続けた。

EUが期限延長を認めると、労働党のジェレミー・コービン党首もようやく総選挙の実施に応じる姿勢を示した。その後に小さなゴタゴタはあったが、最終的に投票日はクリスマス直前の12月12日に決まった。

混乱は選挙後も続く?

それに合わせて現在の議会は11月6日に解散する運びとなった。1948年以降で、最も短い会期だ(「静粛に!」の連発で話題になったジョン・バーコウ下院議長は10月31日で退任)。離脱合意案をめぐる論戦は選挙後まで棚上げになるので、実際の離脱に向けた動きはしばらく凍結される。

総選挙の争点はブレグジットだけではない。コービンは選挙戦の開始に当たり、「脱税者、ペテン地主、悪徳経営者、大環境汚染者」と闘うと宣言したが、最も重要な争点はやはりブレグジットだ。

与党・保守党はジョンソンの離脱案を有権者に問い、可能な限り早期の離脱実現を訴えるだろう。コービンはEUとの関税同盟を含む「もっとソフトな」ブレグジットと、再度の国民投票実施を目指すと約束した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏、新たな関税戦争 EUとアップルに矛先

ビジネス

トランプ氏、アップルに圧力 海外製なら「25%の関

ビジネス

トランプ氏「EUに6月1日から関税50%」と投稿、

ワールド

韓国国防省、米軍撤退巡り協議していないと表明 WS
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:関税の歴史学
特集:関税の歴史学
2025年5月27日号(5/20発売)

アメリカ史が語る「関税と恐慌」の連鎖反応。歴史の教訓にトランプと世界が学ぶとき

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドローン母船」の残念な欠点
  • 2
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界の生産量の70%以上を占める国はどこ?
  • 3
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 4
    コストコが「あの商品」に販売制限...消費者が殺到し…
  • 5
    子育て世帯の年収平均値は、地域によってここまで違う
  • 6
    「空腹」こそが「未来の医療」になる時代へ...「ファ…
  • 7
    米国債デフォルトに怯えるトランプ......日本は交渉…
  • 8
    空と海から「挟み撃ち」の瞬間...ウクライナが黒海の…
  • 9
    人間に近い汎用人工知能(AGI)で中国は米国を既に抜…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「自動車の生産台数」が多い…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドローン母船」の残念な欠点
  • 4
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 5
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」…
  • 6
    コストコが「あの商品」に販売制限...消費者が殺到し…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「太陽光発電」を導入している国…
  • 8
    「空腹」こそが「未来の医療」になる時代へ...「ファ…
  • 9
    中ロが触手を伸ばす米領アリューシャン列島で「次の…
  • 10
    人間に近い汎用人工知能(AGI)で中国は米国を既に抜…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
  • 5
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 6
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 7
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 8
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中