最新記事

アフガニスタン

地雷撤去はアフガン女性の自立と夢への第1歩

Afghan Women Taking Their Country Back

2019年11月21日(木)19時45分
カーン・ヘンドリックス(カブール在住のフォトジャーナリスト)

チームの最年少は、5カ月ほど前に加わったザーラ・アタイー(21)だ。

アタイーが働きだしたのは16歳。近所の幼い子供たちに算数や読み書きなどの基礎的な勉強を教え始めた。両親は読み書きができず、彼女はこの年齢で家計を支える大黒柱になった。

父親のアリ・フセインは男性地雷除去チームの警備員だったが、雇い止めになっていた。そこでアタイーは、新設された女性地雷除去チームに応募した。非常に危険な作業だが、ほかにフルタイムの仕事はほとんどなく、月400ドルの報酬は民間の約4倍。これを見逃す手はなかった。

父親はアタイーの決断に賛成した。唯一の稼ぎ手として家計を支える娘を誇りに思っているが、危険な仕事だという認識はある。「作業中に地雷に出くわすかもしれないが、働いてもらうしかない。うちは生活が苦しいから」

世界有数の地雷汚染国

アタイーはこの仕事に強い誇りを持っているが、いずれは岩だらけの作業現場から離れるつもりだ。お金をためたらビジネスの学士号を取得して、服をデザインする会社を起業したいという。だが今のところは、困難で危険な責務を背負い続けている。

チームの他のメンバーも、多くは女手一つで家族の暮らしを支えながら、将来就きたい仕事に備えて勉強している。2児の母ファイザ・レザイーは、遠く離れたカブールの大学にいる夫の学費を援助している。大学で学ぶことを勧めたの彼女自身だ。

チーム最年長のジャミーラ(34)は、5人家族の唯一の稼ぎ手だが、弁護士になる夢をかなえるため、夜間に時間を見つけて勉学に励んでいる。地雷除去の仕事は女性たち個人の尊厳と経済状況の両面に多くのメリットがあるが、同時に重大な危険を伴う。

アフガニスタンは世界有数の地雷汚染国だ。40年に及ぶ紛争の負の遺産は膨大な数に上り、いまだに700平方キロ近い土地に地雷やクラスター爆弾などの不発弾が埋まったままになっている。

今年5月には、バーミヤンの小さな学校の裏で、何十年も眠っていた不発弾が爆発し、少年3人が死亡。遺体が確認されたのは24時間近くたってからだった。地雷やクラスター爆弾などの不発弾によるアフガン人死傷者の数は、昨年だけで1400人以上、2012年以降3倍に増えている。犠牲者の80%以上は子供たちだ。

そんなアフガニスタンから地雷を一掃するのは大仕事だ。国際社会は過去30年、アフガニスタンの地雷除去プロジェクトに推定約15億ドルを投じてきた。だが、地雷ゼロと宣言されたのは全34州のうち1州のみだ(バーミヤンもゼロに近づきつつある)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドネシア中銀、3会合連続金利据え置き ルピア支

ワールド

戦略的互恵関係を推進、国会発言は粘り強く説明=日中

ビジネス

アングル:米株式取引24時間化、ウォール街では期待

ビジネス

英CPI、11月+3.2%に鈍化 市場は18日の利
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中