最新記事

アフガニスタン

地雷撤去はアフガン女性の自立と夢への第1歩

Afghan Women Taking Their Country Back

2019年11月21日(木)19時45分
カーン・ヘンドリックス(カブール在住のフォトジャーナリスト)

アフガニスタン全34州のうち地雷ゼロ宣言されたのは1州だけ Omar Sobhani-REUTERS

<女性だけの地雷除去チームが中部バーミヤン州で活動中──危険極まりない仕事を彼女たちはなぜ選んだのか>

アフガニスタンのライエガ・マルファト(22)は今年8月、地元バーミヤン州の赤土を注意深く掘り返しながら、地雷探知機が何かの金属に当たるのを感じた。慎重に探知機を脇に置き、大皿ぐらいの物体の周囲を手で掘り始める。素人目には一見、危険はなさそうに見えるが、マルファトはすぐに気付いた──旧ソ連時代の対人地雷だ。

マルファトは他の19人の女性と共に、アフガニスタン初の女性だけの地雷除去チームで活動している。国連地雷対策サービス部が2018年に創設したこの試験的プログラムには、主な目標が2つある。

まず、女性たちに数十年続く戦乱が残した危険物の除去訓練を施し、スキルを身に付けさせること。中央高地にあるバーミヤン州は比較的平和な地域だが、それでも地雷などの爆発物がそこら中に残っている。

2つ目は、この国の社会に色濃く残る男女差別を打破し、新しい挑戦的な職業で成功する機会を女性たちに提供することだ。実際、アフガニスタンでは地雷除去の仕事で経済的自立を果たす女性が増えている。さらに法曹界やビジネスなど、多様なキャリアにつながる勉学の機会を手に入れる女性も少なくない。

女性たちは地雷除去を通じて自国をより安全な場所にする一方、その先の多様な目標に向かって歩んでいる。

16歳で一家の大黒柱に

タリバン政権の崩壊から18年、アフガン女性を取り巻く状況は改善したとよく言われるが、課題は山ほど残っている。保守的な農村部では、女性の価値がいまだに認められず、広範な嫌がらせや差別に直面している。

2004年の新憲法はもちろん、タリバン以前の1964年の憲法も表向きは男女平等をうたっているが、多くの女性にとって日々の現実は平等には程遠い。変化のスピードは遅く、根強い保守的文化の下で女性は2級市民の役割を押し付けられている。

首都カブールのような都市部や、バーミヤンのような一部の比較的リベラルな地方でも、働く女性はまだ例外的な存在だ。最近のギャラップの世論調査によれば、女性のほぼ半数が手段と機会があれば国を離れたいと考えている。さらにアフガン女性は生き方を選択する自由について、世界中の女性の中で最も満足度が低いという。

それも無理はない。アフガニスタンでは女性の80%が労働市場から排除されている。生涯で一度も仕事に就いた経験がない女性も少なくない。この困難な状況を考慮すれば、女性地雷除去チームの活躍は驚異的だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英、既存石油・ガス田での新規採掘を条件付き許可へ 

ビジネス

中国工業部門利益、10月は5.5%減 3カ月ぶりマ

ワールド

暗号資産企業の株式トークン販売巡る米SECの緩和措

ビジネス

米ホワイトハウス付近で銃撃、州兵2人重体 容疑者は
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 8
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 9
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中