相次ぐ台風被害で国土強靭化緊急対策拡充へ 人手と予算の不足が課題に
台風19号やそれに続く豪雨などの被害を受け、政府・与党は昨年度に打ち出した3カ年の国土強靭化緊急対策の拡充を検討し始めた。写真は台風19号で被害を受けた家。福島県で15日撮影(2019年 ロイター/Soe Zeya Tun)
台風19号やそれに続く豪雨などの被害を受け、政府・与党は昨年度に打ち出した3カ年の国土強靭化緊急対策の拡充を検討し始めた。まずは水害に関する対策パッケージを取りまとめた上で、補正も検討し、「必要なものを上乗せする」(菅義偉官房長官)構えだ。ただ、こうした対策には人手不足の制約もあり、緊急対策の期間を延長するという議論が主軸になりつつある。11月中旬にも概要を取りまとめるのがメインシナリオだ。
まず対策パッケージと補正
水害対策については安倍晋三首相が「水害が頻発化、激甚化する場合に備えた治水対策を適切に講じていく」、「予備費を活用して新しい対策パッケージをまとめるよう指示した」(10月24日衆院本会議など)と繰り返し発言。自民党の岸田文雄政調会長も18日、台風被害からの復旧支援のため「補正予算案を年内の早い時期に編成すべき」と述べており、水害対策のパッケージと補正予算の必要性は政府・与党内で広く共有されている。
しかし各論では議論は集約していない。もともと政府・与党内では10月の消費増税による消費の落ち込みに対応する形での経済対策が議論されていた。軽減税率やポイント還元などの増税対策を打ち出しているため、新たな経済対策は不要との意見と、輸出・生産の下落による景況感悪化の可能性に対応した対策が必要との意見があった。
国土強靭化3カ年計画拡充
そこに台風19号の被害が発生し、国民的に必要性の理解されやすい水害対策の拡充が、経済対策を兼ねるものとして議論され始めた。議論の中心は、2018年末に打ち出された事業規模7兆円、国費3兆円台の国土強靭化のための緊急対策の拡大。菅義偉官房長官も26日、3カ年緊急対策に関連し、「必要なものはさらに上乗せをする中で、災害に対応する仕組みを作っていきたい」と述べた。
昨年策定された3カ年の緊急対策は、河川の堤防かさ上げや大規模停電防止など160項目にわたる。台風で関西空港が浸水し停電したことを踏まえたエネルギー・運輸対策や、氾濫の可能性のある河川の堤防強化などが柱だ。大阪府北部地震で小学生が倒壊したブロック塀の犠牲になった事故を受け、学校の塀の撤去・改修や、小中学校のエアコン設置なども盛り込まれた。