最新記事

災害

相次ぐ台風被害で国土強靭化緊急対策拡充へ 人手と予算の不足が課題に

2019年10月29日(火)18時06分

人手不足と財務省の壁、対策期間延長で対応

しかし人手不足により「エアコン設置が完了していないなど、予算を使い切れていない状態」(経済官庁幹部)であるため、財務省は現在までのところ大幅な拡充に慎重姿勢だ。

与党内でも、治水対策は「時間がかかるため短期の補正予算で対応する性格でない」(幹部周辺)との声がある。台風19号で堤防が決壊した千曲川や阿武隈川は、決壊箇所の修復にどのような工事が必要か検証する有識者委員会が立ち上がったばかりで、「結論が出るには数カ月かかる」(国土交通省幹部)状態だ。

人手不足に加え「長年の公共工事縮小で地方の建設業者数が減少しており、公共工事を急には増やせない」(同幹部)との指摘もある。このため支出抑制を重視する財務省内でも「水害対策では、建設事業者が増えるような政策の方向性も打ち出す必要があるのでは」(幹部)と懸念する声も聞かれ始めた。

与党内は大規模な水害対策を要望する声が多いが、「短期間の支出を拡大しようとすれば『人手不足で無理』と財務省から足元を見られるので、期間を延長することで規模を拡大したい」(自民幹部)との意見が主軸になりつつあるようだ。

財務省内でも、消費増税対策として2019年度と20年度の本予算に計上される2兆円規模の臨時・特別の措置がなくなる21年度以降の対応が議論されており、水害対策も、細く長く支出を拡大する形で議論される公算が大きそうだ。

補正予算については「20年度予算と一緒に通常国会で審議するためには3週間以内にはまとめる必要がある」(財務省幹部)との声が多い。その前提として各年度の対策規模を決めることになるため、強靭化対策の拡充も含め、11月中旬には一定の方向性が出そうだ。

(編集:石田仁志)

[竹本能文

[東京 29日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191105issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

10月29日発売号は「山本太郎現象」特集。ポピュリズムの具現者か民主主義の救世主か。森達也(作家、映画監督)が執筆、独占インタビューも加え、日本政界を席巻する異端児の真相に迫ります。新連載も続々スタート!


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA

ビジネス

根強いインフレ、金融安定への主要リスク=FRB半期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 6

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中