最新記事

運動

「バドミントンは脳機能を向上させる」と東北学院大学の研究チーム

2019年9月11日(水)18時10分
松岡由希子

バドミントンは複雑な運動......。世界選手権2連覇を達成した桃田賢斗選手 Vincent Kessler-REUTERS

<東北学院大学の高橋信二教授らの研究チームは、バドミントンのような複雑な運動は、脳の遂行機能にポジティブな影響を及ぼすと論文を発表した......>

バドミントンは、2020年東京オリンピックで日本選手によるメダルの獲得が期待されている競技のひとつだが、私たちの脳にポジティブな効果をもたらすスポーツでもあるようだ。

バドミントンとランニングの脳の遂行機能への効果を比較

東北学院大学の高橋信二教授らの研究チームは、バドミントンとランニングの脳の遂行機能への効果を比較し、2019年9月4日、オープンアクセスジャーナル「プロスワン」において、「意思決定などの認知能力や様々な動作が求められる複雑な運動は、単純な運動に比べて、脳の遂行機能にポジティブな影響を及ぼす」との研究論文を発表した。

研究チームでは、東北学院大学に在籍する健康な大学生20名(男性8名、女性12名)を対象に、ランニングとバドミントンを10分づつ行わせ、さらに10分間、座って休憩させた。ランニング、バドミントン、休憩の間には、被験者の酸素消費量と心拍数をモニタリングし、それぞれの前後に、文字色に干渉されずに色名を正しく呼称できるかを測る「ストループ検査」を実施した。

その結果、バドミントンをすると、休憩時に比べて「ストループ検査」の成績が著しく向上した一方、ランニングをしても「ストループ検査」の成績はそれほど向上しなかった。

研究チームは、このような結果をふまえて「バドミントンの認知的側面は、ランニングよりも、脳の遂行機能のひとつ『抑制機能』に効果をもたらすのではないか」と考察。

バドミントンは、シャトル(羽根)の速度や軌道、相手の位置を把握する必要があるのみならず、クリアーやスマッシュ、ドロップなど、的確なショットを瞬時に選択し、実行しなければならない。このようなバドミントンの認知要求が遂行機能にかかわる脳の領域を活性化させるのではないかとみられている。

運動が脳にもたらす影響についてのこれまでの研究

これまでも、「運動が脳に効果をもたらす」との研究成果が数多く示されてきた。加ブリティッシュコロンビア大学(UBC)が2014年に発表した研究成果では、ランニングや水泳、サイクリングといった有酸素運動を定期的に行っている人は、学習や感情に関連する脳の海馬の領域がより大きく、活発であることが明らかとなった。

また、豪ウエスタンシドニー大学と英マンチェスター大学の共同研究チームは「有酸素運動は、加齢に伴う脳の萎縮を遅らせ、アルツハイマー病や認知症といった神経変性疾患の予防につながる」との研究論文を2017年に発表。ポルトガルのリスボン大学が2012年に発表した研究論文でも「身体運動が、認知機能障害、とりわけ血管性認知症のリスクを軽減する」との結論が示されている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

高市首相、中国首相と会話の機会なし G20サミット

ワールド

米の和平案、ウィットコフ氏とクシュナー氏がロ特使と

ワールド

米長官らスイス到着、ウクライナ和平案協議へ 欧州も

ワールド

台湾巡る日本の発言は衝撃的、一線を越えた=中国外相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナゾ仕様」...「ここじゃできない!」
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 5
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    【銘柄】いま注目のフィンテック企業、ソーファイ・…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中