最新記事

イギリス

「イギリスのトランプ」が首相に、アメリカからお悔やみが殺到

'Dear UK' Trends as Americans Sympathize With Election of Boris Johnson

2019年7月24日(水)18時30分
シャンタル・ダシルバ

差別発言が多く政治を分断させるところがトランプそっくりのジョンソン Toby Melville/REUTERS

<「この悪夢をともに乗り切ろう」「一緒にカナダへ逃げよう」と、連帯を呼び掛け>

アメリカでは「イギリスのトランプ」として知られるボリス・ジョンソンが7月23日、イギリスの次期首相に選出された。ドナルド・トランプ米大統領はすぐさま、盟友ジョンソンの勝利を祝い、応援するメッセージを送った。「彼は偉大になるだろう!」

だが一般のアメリカ人は、トランプとはまったく違う理由でツイッターに殺到した。イギリス人に向けて、応援と連帯のメッセージを送るため。SNSユーザーのひとりであるダーウィン・レッシュの言葉を借りれば、「この悪夢をともに乗り切る」ためだ。

アメリカ人はツイッターを哀悼の言葉で埋めつくし、#Dear UK"はトレンド入りした。作家のローラ・アン・ギルマンは、「親愛なるイギリスの友人たちへ:私たちからお悔やみを申し上げます。私たちも、あなたがたの深く尽きせぬ恐怖を共有しています」と書いた。

別のユーザーは、「親愛なるイギリスのみなさん、私たちにはわかっています。あなたがたの国の一部の人が、『イギリスのトランプ』の異名をとるボリス・ジョンソンという愚か者を押し付けたんだ、って」と書く。「私たちも、同じ失望を抱いています。私たちはきっと、この状況をともに乗り越えられるでしょう。あの馬鹿どもが私たちの国を破壊してしまわなければの話ですが」

ウィリー・アレンのメッセージはこうだ。「親愛なるイギリスのみなさん、お悔やみ申し上げます。レイシスト(人種差別主義者)とミソジニスト(女嫌い)の指導者を頂く国の集まりにようこそ!」

<参考記事>次期英首相最有力、ボリス・ジョンソンは国をぶっ壊しかねない問題児

トランプと同じ差別主義者

ジョンソンは、イギリス政治を分断させることが多いお騒がせな政治家だ。EU離脱の是非を問う2016年の国民投票では、保守党の離脱派を率いて大々的なキャンペーンを展開した。EU離脱はすでに二度にわたって延期されているが、ジョンソンはEUとの合意の有無にかかわらず、10月31日までに離脱することを公約に掲げていた。少なくとも口の上では「合意なき離脱」も厭わないとする強硬離脱派だ。

トランプと同じく差別主義者として非難されており、攻撃的な発言でたびたび批判されている。

ある時は、同性愛者の男性たちを、「タンクトップを着た同性愛者」と呼んだ。別のときには、トニー・ブレア元首相を風刺する記事のなかで、英連邦内のアフリカ人たちを、「スイカのような笑顔」を浮かべて「旗を振り回す黒人の子どもたち」と呼んだ。

ジョンソンは、過去にはトランプを批判したこともある。大統領選中のトランプについて、「まともではなく」、高い地位には「ふさわしくない」と述べていた。その後、2016年にジョンソンがイギリス外相に就任して以降、このふたりは絆を深めてきた。

<参考記事>独走ジョンソンは英首相の器なのか

ひとりのアメリカ人は、イギリスの有権者に対して、国から脱出する計画を持ちかけた。「親愛なるイギリスのみなさん、引っ越し用トレーラーをシェアして、一緒にカナダへ引っ越しませんか?」

(翻訳:ガリレオ)

20190730issue_cover200.jpg
※7月30日号(7月23日発売)は、「ファクトチェック文在寅」特集。日本が大嫌い? 学生運動上がりの頭でっかち? 日本に強硬な韓国世論が頼り? 日本と対峙して韓国経済を窮地に追い込むリベラル派大統領の知られざる経歴と思考回路に迫ります。

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スイス中銀、第1四半期の利益が過去最高 フラン安や

ビジネス

仏エルメス、第1四半期は17%増収 中国好調

ワールド

ロシア凍結資産の利息でウクライナ支援、米提案をG7

ビジネス

北京モーターショー開幕、NEV一色 国内設計のAD
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中