最新記事

ネット

トランプのウィキペディアページは常に戦争中

Donald Trump’s Wikipedia Entry Is a War Zone

2019年6月21日(金)16時20分
アーロン・マク

編集者は疑わしい投稿にも目を光らせている。トランプ政権の誰かが、都合のいいように修正しようとしている可能性があるからだ。ツイッターも含め、政治的な意図による情報操作は珍しいことではない。

一方で編集者のプライバシーは慎重に保護されている。編集者や管理者の本名や経歴などは公表されていない。

トランプのページに関与している編集者も、トランプに詳しいから選ばれた専門家ではない。トークページの議論に積極的に参加し、編集に貢献してきた実績で選ばれている。

「概要」めぐり議論沸騰

彼らはページの記述の守護者であり、どんなに小さな加筆や修正も徹底的に議論する。閲覧する側は、誰が書き、誰が編集しているのかを知る由もない。ただし、編集者の中には自分の素性をほのめかしたり、ヒントを与えたりする人もいる。トランプのページに関して言えば、こんな人たちだ。

Scjessey は米ペンシルベニア州在住のイギリス人で、元ウェブ・デザイナー。モータースポーツに関する記事の編集も手掛けている。編集歴が10年以上の JFG はスイス人だ。「スイス人は中立、独立、正確で知られている。これぞウィキペディアに求められる資質だ!」とメールで伝えてきた。

例の米ロ首脳会談でのトランプ発言について記述すべきだと主張した MrX は11年にウィキで活動を始め、建築と地理、政治のページを手掛けている。しばしばトランプ擁護に回る Atsme は元ドキュメンタリー映画の制作者で、海洋生物に関するページの編集もする。

編集者の議論が最も沸騰するのは、ページの先頭に置かれた4パラグラフから成る概要部分だ。ウィキはこの部分をとりわけ重視している。平均的な閲覧者は1つのトピックに数分しか費やさないとされるので、最初の4パラグラフしか読まない可能性が高いからだ。

トランプのページで言えば、4パラグラフの概要にロバート・ムラー特別検察官によるロシア疑惑捜査の結果を書き込むべきだと主張する編集者もいるが、まだ結論は出ていない。

最も議論を呼んでいるのは、3パラグラフ目にある「彼の発言や行動の多くは人種差別と取られかねない、あるいは人種差別主義者のものとされている」の部分だろう。

卑怯な書き方だ、と反発する編集者もいる。編集者 HiLo48 は「『人種差別と取られかねない』は曖昧で不明瞭ではないか」と、トークページに書き込んでいる。「これではトランプ本人がよく使う言い逃れ表現とほとんど同じだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中