最新記事

ネット

トランプのウィキペディアページは常に戦争中

Donald Trump’s Wikipedia Entry Is a War Zone

2019年6月21日(金)16時20分
アーロン・マク

ヘルシンキ会談についての議論が始まって10日後、管理者の Awilley はこの項目を加えることに十分な支持があるという判断を下し、議論を終えた。

トランプのページのロシアの項目は現在、「ロシアの選挙妨害を否定するプーチン大統領を支持するかのようなトランプの発言は、アメリカで超党派的な厳しい批判を浴びた。......このコメントは多くの共和党議員や大半のコメンテーター、通常はトランプを支持している人々からも厳しく批判された」となっている。

ウィキは「素早い」を意味するハワイ語で、ペディアはエンサイクロペディア(百科事典)の短縮形。だが速報性と百科事典的な慎重さの両立は難しい。特に「トランプ」のような項目ではそうだ。トランプのページは、ウィキが閲覧データの記録を取り始めた2007年12月以来、個人に関するものとしては最も閲覧回数が多い。今年1月までに、2位の「バラク・オバマ」(前米大統領)より3000万回多い1億5600万回も閲覧された。

その記述は基本的に伝記であり、大統領としてのトランプについての記述は全体の約30%にすぎない。また「大統領ドナルド・トランプ」や「ソーシャルメディア上のトランプ」などは別に立項されている。

トランプのページは常に更新されている。04年に登場して以来、書き換えられた回数は誤字の修正などを含めて2万8000回以上。修正に至るトークページの議論の内容は、全て保存されている。

トークページは、運営母体であるウィキメディア財団のキャサリン・マー事務長に言わせると「ウィキのあらゆる記事を生み出すニュース編集室」だ。

トランプの大統領就任以降、このページの編集作業はずっと困難になった。昨年11月には上級編集者のアカウントが何者かに乗っ取られ、トランプの顔写真が差し替えられた。ペニスの写真に、だ。

誰かがスマホのAI音声アシスタントに「トランプって?」と語り掛けると画面にペニスのクローズアップが映し出される。トークページの編集者たちは、この事件が報道されると模倣犯が続出しないかと心配した。この事件を受けて、管理者の MelanieN はトランプのページを一時的に「全保護」し、管理者しか編集できないようにした。

ウィキでは最も厳しい措置だ。現在も外部からの編集がブロックされているページには「コーラン」や「バージニア工科大学銃乱射事件」などがある。

トランプのページはよく「全保護」の対象になる。筆者がスペルや句読点の打ち方の間違いを指摘した時も、上級編集者の承認を得るまでは修正を実行できなかった。多少の変更でも大きな問題になりかねないからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ハマス、新たに人質1人の遺体を引き渡し 攻撃続き停

ワールド

トランプ氏、米国に違法薬物密輸なら「攻撃対象」 コ

ビジネス

米経済、来年は「低インフレ下で成長」=ベセント財務

ビジネス

トランプ氏、次期FRB議長にハセット氏指名の可能性
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 3
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止まらない
  • 4
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 5
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 6
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 9
    【香港高層ビル火災】脱出は至難の技、避難経路を階…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中