最新記事

ブレグジット

英EU離脱巡り独仏にきしみ マクロン大統領が長期延期に猛反対

2019年4月14日(日)11時18分

欧州連合(EU)臨時首脳会議では、フランスが英国の離脱期限延期を巡って拒否権を発動する事態は避けられたものの、マクロン仏大統領は強硬論を展開した。ブリュッセルで10日、会見に臨むマクロン大統領(右)とドイツのメルケル首相(2019年 ロイター/Eva Plevier)

欧州連合(EU)が10日に開いた臨時首脳会議で、フランスが英国の離脱期限延期を巡って拒否権を発動する事態は避けられた。

多くの人々は、かつてシャルル・ドゴールがEUの前身である欧州経済共同体(EEC)に英国が加盟するのを拒否したような場面が、もしかしたら再現するのではないかと思っていたのだ。

実際にマクロン大統領は拒否権こそ使わなかったが、首脳会議で強硬論を展開し、戦後のフランス指導者が持ち続けてきた矜持(きょうじ)を維持した。ただそれによって多数の加盟国が賛成していたブレグジット(英のEU離脱)の1年延長を阻止した結果、主にドイツの当局者をいら立たせてしまった。

これは欧州においてドイツのメルケル首相が発揮してきた精神的なリーダーシップに積極的に異を唱えようとする新たな動きなのかもしれない。背景にはメルケル氏の退任時期が近づいていることや、決断を先送りしがちな同氏の政治姿勢に対するフランスの不満の高まりがある。

複数の外交筋の話では、EU首脳会議に先立って行われたマクロン氏とメルケル氏の首脳会談では両国が合意に達することができなかった。これは極めて異例な事態だ。

そこでマクロン氏はほぼ単独で、ブレグジットの1年延期はEU諸機関にとってリスクが大き過ぎるし、欧州議会選を前に有権者に間違ったメッセージを与えてしまう、と他の加盟国を説得せざるを得ない形になった。

フランス政府高官は、ベルギーやルクセンブルク、スペイン、マルタはマクロン氏の考えに共感したと述べた。しかしEU内には、こうしたマクロン氏のやり方はドゴールばりのスタンドプレーにすぎないとの厳しい目も存在する。

あるドイツの外交筋はマクロン氏の動きについて「恐らくは国内政治とより深く関係している。ドイツに反論し、英国に意地悪をするのが大事なのだろう。(しかし)結局それはマクロン氏のためにならない」と冷ややかに話す。

EU首脳会議はブレグジットを10月末まで延期することで折り合ったものの、翌11日にはドイツ側の不満が明らかになった。メルケル氏の与党幹部はツイッターで「ブレグジットの延期期間はもっと長い方が良かったのに、マクロン氏が自分の選挙戦と利益を欧州の結束よりも優先した」と批判した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国、エヌビディアが独禁法違反と指摘 調査継続

ワールド

トルコ裁判所、最大野党党首巡る判断見送り 10月に

ワールド

中国は戦時文書を「歪曲」、台湾に圧力と米国在台湾協

ビジネス

無秩序な価格競争抑制し旧式設備の秩序ある撤廃を、習
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中