最新記事

ブレグジット

英EU離脱巡り独仏にきしみ マクロン大統領が長期延期に猛反対

2019年4月14日(日)11時18分

孤立は望まず

一方マクロン氏はEU首脳会議終了後、EUの共同利益を保つためならば孤立をいとわないつもりだったと強調。「はっきりした態度でいることを言い訳しない。現在の局面で原理原則を維持するのがフランスの役割でもある」と語った。

フランスのある外交筋は、マクロン氏はドイツとの間で体裁を整えるだけの妥協には満足しなかった半面、オランダやデンマーク、スウェーデンとは協力したかったと打ち明けた。「われわれは孤立したリーダーシップ─たとえそれが光栄ある孤立だとしても─ではなく、あくまで他国を結集できるリーダーシップを追求している」という。

それでもマクロン氏の考えでは、ぎりぎりまで決断をしないメルケル氏の姿勢は、ブレグジットの過程で逆効果をもたらす。EUは英国をつなぎ止め続けて2016年の国民投票結果を反故にしようとすべきでなく、それは欧州議会選においてポピュリスト(大衆迎合主義)勢力がEUは民意を無視していると攻撃する格好の材料を与えてしまう、というのがマクロン氏の主張だ。

もっともあるEU高官は「マクロン氏は強い発言力を持っていると証明したいのだ。多分、欧州議会選でフランスが英国より欧州懐疑派寄りになるのを恐れている。いずれにしても根回し不足だった」と突き放した。

難しい局面

2度の世界大戦で敵国同士となり多くの犠牲者を出したドイツとフランスは、その後欧州統合主義の中核となっており、両国の関係は依然としてEUの将来を大きく左右する。

マクロン氏としても、国境管理や移民、安全保障、財政などで欧州統合をうまく深化させたいなら、ドイツの支持は欠かせない。

ところが現実には退任が近づいてきたメルケル氏の影響力が衰え、マクロン氏も国内で「黄色いベスト運動」として知られる政府批判運動にさらされ、欧州全体がブレグジットにかかりきりとなっている以上、マクロン氏が切望してきた統合を進めるための改革を実行する好機はほぼ過ぎ去った。

さらに独仏は、幅広い問題で意見を異にしている。欧州改革センターのチャールズ・グラント所長は「両国関係は難しい局面に入っている」と分析。具体的には対米関係やEUの安全保障、デジタル課税などで食い違いがあるとした上で「より全般的にフランスは欧州の強大化を望み、そのために抜本的な改革が必要だと考えているが、ドイツは現在のEUのあり方にかなり満足している」と温度差を指摘した。

(Michel Rose、Andreas Rinke、Gabriela Baczynska記者)

[ブリュッセル ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 「外国人問題」徹底研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年1月27号(1月20日発売)は「『外国人問題』徹底研究」特集。「外国人問題」は事実か錯覚か。移民/不動産/留学生/観光客/参政権/社会保障/治安――7つの争点を国際比較で大激論

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

行き過ぎた円安是正し、物価を引き下げる=中道改革連

ビジネス

午後3時のドルは157円後半へ小幅安、リスク回避で

ビジネス

イオン、クスリのアオキ株保有目的から「友好関係維持

ビジネス

再送中国GDP伸び率、第4四半期は3年ぶり低水準 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 2
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 3
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」も子に受け継がれ、体質や発症リスクに影響 群馬大グループが発表
  • 4
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 5
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    「リラックス」は体を壊す...ケガを防ぐ「しなやかな…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 10
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 8
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中