最新記事

人権問題

同性愛や不倫行為は死刑、窃盗は手足切断! ブルネイ、イスラム式新刑法を4月3日から施行

2019年4月3日(水)12時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

イスラム教のシャリア法を適用したブルネイのボルキア国王 Him Rani - REUTERS

<世界的には性的少数者を容認する流れにあるなか、アジアの小国がこれに逆行するような法律を施行。外国人旅行客にも適用するという>

イスラム教を国教とする東南アジアのブルネイでイスラム教のシャリア法を適用した厳格な刑罰を盛り込んだ新刑法が4月3日から施行される。同刑法では婚姻関係によらない性行為や同性愛の性行為には投石による死刑が適用される可能性があるほか、窃盗犯については罪の軽重、回数などによって手足を切断する刑が執行されるとの規定となっている。

「アムネスティ・インターナショナル」などの人権団体からは「石打ちや手足切断などの刑罰は非人道的で直ちに撤回すべきだ」と非難の声が上がっている。性的少数者の「LGBT」も同新刑法によって処罰の対象になりかねないことから「性的少数者保護」の立場からも国際社会で反対論が高まっている。

現地からの報道等によると、ブルネイのボルキア国王兼首相は2014年5月に同国にシャリア法の導入を表明したものの、厳しい刑罰の適用に対する国内外の反応を見極めるため、新刑法施行のタイミングを見計らっていたという。

ところが2018年12月29日にブルネイの検事総長がウェブサイトで正式な施行を通告、4月3日からの適用が決まった。

不倫、同性愛は立会人の下で石打ち死刑

新刑法によると婚外性行為、不倫性行為、未婚者の性行為、同性愛者による性交には最高刑で死刑が適用され、これはイスラム教関係者の立ち合いの下、身体を拘束された状態で石を投げつけて死に至らせる「石打ち刑」で執行される。

また窃盗犯については初犯が右手、重犯は左足を切断するというイスラム法に基づく刑が執行されるという。

この刑法ではイスラム教徒、ブルネイ国民ではない外国人滞在者、外国人旅行者もその対象となり、刑の執行においても差別しないとされ、今後ブルネイを旅行する外国人観光客も注意が求められることになる。

ブルネイは2014年のシャリア法適用発表以降、国際社会からの見直し要求を拒否してきた。首相府は今回声明を発表し「ブルネイでは一般法とシャリア法の両方の法システムを併用している。性、国籍、人種、信仰に関わらずにブルネイでは家族、個人が宗教的な生活を送ることが求められている」とその正当性を強調し、理解を求めている。

死刑の適用には複数の証言や公平正確な裁判が求められるなどその運用には厳格な条件が付されていることから、イスラム教国としての社会秩序の維持が大きな目的とみられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

カナダ、石油パイプライン新設提案「可能性高い」とカ

ワールド

ガザ停戦合意をトランプ氏が支援、イスラエル首相が会

ワールド

プーチン氏「グローバリゼーションは時代遅れ」、新興

ビジネス

5月実質賃金2.9%減、5カ月連続 1年8カ月ぶり
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗」...意図的? 現場写真が「賢い」と話題に
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    コンプレックスだった「鼻」の整形手術を受けた女性…
  • 7
    「シベリアのイエス」に懲役12年の刑...辺境地帯で集…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    ギネスが大流行? エールとラガーの格差って? 知…
  • 10
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中