最新記事

日本社会

外国人労働者受け入れ5年間で34万5千人へ拡大 「技能実習制度の問題置き去り」の声も

2019年3月19日(火)09時42分

政府は労働力不足に対応するため、新たな外国人受け入れ制度を4月からスタートさせる。新潟県見附市のニット工場で働くベトナムからの技能実習生。2月撮影(2019年 ロイター/Linda Sieg)

府は労働力不足に対応するため、新たな外国人受け入れ制度を4月からスタートさせる。「移民政策はとらない」としてきた安倍晋三首相が初めて本格的な外国人労働者の受け入れにかじを切ることになるが、労働組合からは、国際人権団体などの批判が強かった外国人技能実習制度における問題点が、改善されていないとの指摘が多い。

ロイターは近年急増しているベトナム人労働者や労組関係者、学者などに話を聞き、新たな受け入れ制度について取材した。

「モッ、ハイ、バー、ウォン(1、2、3、飲んで)!」ベトナム式の「乾杯」の声があちこちで響く。先月半ば、埼玉県川口市のカトリック教会では、ベトナムの正月を祝う祭りが開かれていた。晴れ着のアオザイを着た若い女性や、おしゃれした青年たちはみなベトナム人。技能実習生と留学生が多くを占める。

ファム・ヴァン・ホックさん(22歳)は、1年4カ月前に技能実習生として日本に来て、建設業で働いている。

ベトナムの実家は農家で、知り合いから日本に行けば1カ月で15万円稼げると聞き、日本に行くために90万円くらいの借金をした。実際には月に約13万円程度を稼ぎ、最初の1年間は買い物もせず節約して借金を全て返したという。

ベトナムに帰ったら何をしたいか聞くと「日本語を使う仕事をしたい。日本語の先生とか」と答えた。ベトナムで建設業に就くつもりはない。

技能実習から労働者としての受け入れへ

技能実習制度は、日本で培われた技能・技術の開発途上地域への移転を目的とし、「人づくり」に寄与する国際協力という名目で1993年に始まった。

しかし、労働力不足に悩む製造業や建設業にとって、実際は安価な労働力確保の手段として使われた面があり、外国人実習生に対する賃金未払いや暴力、セクハラなどがたびたび問題となってきた。

今後ますます深刻化する労働力不足に対応するため、政府は4月から入管法を改正し新たに「特定技能」という在留資格を創設、実習生ではなく労働者として外国人を受け入れる制度を始める。5年間で最大34万5000人を受け入れる計画だ。

安倍首相は「移民政策はとらない」としているが、今回の入管法改正は、実質的に移民政策に踏み込んだとの見方が強い。

全統一労働組合の佐々木史朗書記長は、新たな制度を導入した背景について「技能実習制度で、バックドアから(労働者を)入れようとしていたことが破綻をきたし、正面から受け入れざるを得なかった結果」とみている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国務長官と中国外相の会談始まる、対面で初の協議

ビジネス

米テスラ、インド市場に本格参入へ 15日に初のショ

ワールド

ミャンマー総選挙、ASEANの優先事項でない=マレ

ビジネス

良品計画、8月31日の株主に1対2の株式分割
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 6
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 7
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 8
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 9
    ハメネイの側近がトランプ「暗殺」の脅迫?「別荘で…
  • 10
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中