最新記事

ロシア軍事

ロシア「撃ち落とせない極超音速ミサイル」を実戦配備へ

Russia Tests ‘New Year’s Gift’ Weapon

2018年12月27日(木)16時00分
トム・オコナー

モスクワの国家防衛管理センターで実験の模様を見守るロシア高官たち Sputnik/Mikhail Klimentyev/ REUTERS

<ロシアが「どんなミサイル防衛システムもかいくぐる」ミサイル「アバンガルド」の発射実験に成功、アメリカとの軍事バランスを変える可能性も>

ロシアは音速の20倍のスピードで飛行すると言われる最新鋭ミサイルの発射実験に成功したと発表した。核弾頭も搭載できる。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は12月26日、首都モスクワの国防省内にある国家防衛管理センター(写真)を訪れ、セルゲイ・ショイグ国防相や軍高官らと共に、極超音速ミサイル「アバンガルド」の発射実験の模様を見守った。ロシア国防省の発表によれば、アバンガルドは南部オレンブルク州のドムバロフスキー基地から約6000キロ離れた極東カムチャッカ半島のクラ演習場に向けて発射され、「垂直・水平方向の誘導制御により、演習場内に設定された目標エリアに予定どおりに着弾した」。

「アバンガルドは潜在的な敵の現在と将来の防空・ミサイル防衛網を突破できる」と、プーチンは高らかに宣言した。「これは偉大な成功であり、偉大な勝利だ。来年アバンガルドを実戦配備し、連隊を組織して戦闘任務に就かせる」

ロシアの力を見せつける

プーチンはまた「このシステムに加え、陸軍と海軍のほかの有望な兵器システムも、配備計画は着々と進んでいる」と語った。「これはロシアへの素晴らしい偉大な新年の贈り物だ!」

<関連記事>ロシアの核魚雷が起こす「放射性津波」の恐怖
<関連記事>アメリカも抜いた?ロシア製最終兵器、最新の実力

プーチンは今年3月、連邦議会で行った年次教書演説で、既存のミサイル防衛網ばかりか、これから配備される予定の防衛システムをも無力化する一連の最新兵器を開発中だと発表。アバンガルドもそこに含まれていた。プーチンによれば、新型兵器の配備を決めたのは、ロシアの言い分を聞かず、国際社会におけるロシアの影響力拡大を妨げようとする勢力に対抗するためだ。

「誰も問題の本質について我々に語ろうとせず、我々の見解を聞かなかったが、今なら耳を傾けるだろう」──プーチンは年次教書演説でアバンガルドのシミュレーション動画を見せながら説明した。「驚くなかれこのシステムは、マッハ20を超える極超音速で大陸間飛行が可能だ」

「2004年に述べたように、このミサイルは、目標に向かって滑空中、水平方向(数千キロ単位で)と垂直方向の誘導制御を行える」と、プーチンは付け加えた。「従って、あらゆる防空・ミサイル防衛システムに対して無敵だ。新素材の使用により、(電波通信が途絶する)プラズマ発生下でも、長距離の誘導が可能になった。目標に向かって隕石か火の玉のように飛び、表面温度は1600〜2000℃に達するが、誘導装置は確実に操作できる」

アバンガルドの発射システムは、大陸間弾道ミサイルRS-28サルマートの打ち上げにも使える。このミサイルもプーチンの年次教書演説で発表されたもので、欧米では「サタン2」と呼ばれている。プーチンの演説を受けて、当時のユーリ・ボリソフ国防副大臣は、新型兵器は「十分にテストを重ねた」もので、「はったりではない」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パキスタン首都で自爆攻撃、12人死亡 北西部の軍学

ビジネス

独ZEW景気期待指数、11月は予想外に低下 現況は

ビジネス

グリーン英中銀委員、賃金減速を歓迎 来年の賃金交渉

ビジネス

中国の対欧輸出増、米関税より内需低迷が主因 ECB
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    ギザのピラミッドにあると言われていた「失われた入…
  • 7
    インスタントラーメンが脳に悪影響? 米研究が示す「…
  • 8
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中