最新記事

日本の宇宙開発

日本の次世代ロケット「H3」の打ち上げを支える新型車両が公開された

2018年12月10日(月)19時30分
鳥嶋真也

運転席には人が乗車するするものの、基本的には地面に埋め込まれた磁石をセンサーがたどることで自動運転する。

車体のカラーリングは青と黒、白色の3色。青はJAXAのコーポレート・カラー、黒は宇宙空間、白は先進性や未来感を表しているという。

space1210c.jpg

タイヤの数は合計56本。写真の中央に見えるセンサーなどを使い、自動運転で走行する(筆者撮影)

華奢なロケットを優しく運搬、高い信頼性や整備性も実現

日本車輌は重量物を運搬する車輌や、無人で物を運ぶ車の開発で、数十年にわたる高い実績をもっており、この台車の開発にあたっては、そのノウハウが大いに活かされている。

とはいえ、ロケットというきわめて特殊な物を運ぶため、その開発は決して簡単なものではなかったという。

たとえば、発射台と射座との間を配管などでつなぐ必要があることから、停止位置の誤差はわずかプラスマイナス25mm(前後左右)に収まるようになっている。

また、ロケットの機体は徹底した軽量化により、きわめて華奢なつくりになっているため、水平精度は常に0.2度、つまりほとんど傾かずに、さらに加減速時の加速度は0.08G以下と、優しく安全に運べるようにも配慮されている。

くわえて、故障などが起これば、ロケットの打ち上げが遅れてしまい、打ち上げ時の条件などによっては打ち上げ中止になりかねない。一般的な運搬車輌であれば、故障しても代わりの車輌が用意できるが、このような車輌の場合は難しい。

そこでロケットを確実に、時間どおりに確実に運ぶため、高い信頼性、冗長性、メンテナンス性も兼ね備えている。たとえばディーゼル発電機や油圧ポンプ、制御システムなどの重要な部分には冗長性をもたせ、一部が故障しても、30分以内に復旧し、走行を継続できるようにした。さらに、各部のチェックを自動でできるようにしたり、部品の消耗度を管理するシステムを導入したりし、年間維持費を半減したという。

台車はこのあと、一度分解して種子島宇宙センターへ輸送。再度組み立て、2019年5月ごろに実際の射場を使った走行試験を実施。2020年度に予定されているH3ロケットの初打ち上げに備える。

自動走行のデモの様子。距離は150mと実際より短いが、S字コーナーや発進、停車の手順などは同じ(筆者撮影)

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国軍、台湾包囲の大規模演習 実弾射撃や港湾封鎖訓

ワールド

和平枠組みで15年間の米安全保障を想定、ゼレンスキ

ワールド

トルコでIS戦闘員と銃撃戦、警察官3人死亡 攻撃警

ビジネス

独経済団体、半数が26年の人員削減を予想 経済危機
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 5
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 6
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アメリカで肥満は減ったのに、なぜ糖尿病は増えてい…
  • 10
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中