最新記事

米安全保障

トランプを止められる唯一人の男、マティス国防長官が危ない?

The Incredible Shrinking Defense Secretary

2018年8月31日(金)20時10分
ララ・セリグマン

だからといって、マティスがトランプに干されるとかクビ寸前、というわけではない。就任2年目の大統領が外交政策で独自色を強め、側近の助言に耳を貸さなくなることは珍しくない。ただトランプは、ほとんどの歴代大統領より傲慢で、感情の起伏も激しい。マティスにとってリスクがより高いのは間違いない。

与党・共和党関係者を含め、トランプに批判的な専門家の多くは、マティスのことをトランプに対する「歯止め」と見なしてきた。マティスが中核の国家安全保障問題でトランプに譲歩したと思って失望している者もいる、とイーグレンは指摘する。

「マティスは賢い。今では、トランプが突拍子もない発言を始めると雲隠れしてしまう」、とイーグレンは言う。「都合が悪くなると姿を消すやり方は最高だ」

世間の注目やメディアを遠ざける姿勢のおかげで、マティスは今も国防長官の職に留まれているのかもしれない。トランプは、自分より注目を浴びる部下には報復する嫌いがある。

「マティスはうまく立ち回ろうとしている」、とパネッタは言う。「もし彼がメディアに露出して自分の意見を宣伝すれば、トランプに対する影響力は逆に損なわれてしまう」

だがそのせいで、マティスとメディアの関係は緊張した。彼は4月以降、テレビカメラの前で定例記者会見を開くのを拒み、ホワイトも5月以降は開かなくなった。同省を担当するベテラン記者たちは、重要情報の入手が日増しに困難になっていると言う。批判的な記事を書いた記者に対し、報道官が取材拒否するなどの報復措置に出ている、という不満も上がっている。

マティスが、トランプの態度をある程度和らげることができるのはほぼ間違いない。元米軍司令官によれば、ブリュッセルで7月11~12日に開かれたNATO(北大西洋条約機構)首脳会議でトランプが「タダ乗り」批判で同盟国を驚かせときも、NATO首脳はマティスのことを「頼みの綱」と見ていたと言う。首脳たちは密室で、対テロ作戦や新たな軍備増強、作戦指揮系統の改革、国防費の負担増に関して、大胆な対策を取ることで合意した。

「マティスとポンペオは連日、トランプの制御役として多くの仕事を任されている。同盟関係維持のためにはそれが不可欠だ」、とミシェル・フロノイ元米国防次官は言う。

だがマティスの本当の実力が試されるのは、トランプ政権が直面する最大級の問題で決断が行われるときだ。対ロシア関係、シリア内戦の後処理、イランの核開発問題、北朝鮮の非核化など、課題は山積だ。

「今後もトランプはこれらの問題について自分の主張をツイートで発信し続けるはずだ」、とパネッタは言う。

「トランプにこのツイートをやめさせられるかどうかで、マティスと国防チームの手腕が試されると思う」

From Foreign Policy Magazine


【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!

気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを

ウイークデーの朝にお届けします。

ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、米との対立解消へ提案提出の見通し=米高官

ビジネス

モルガンS、有罪判決後も米富豪と取引継続 自殺の年

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米株高で 主力株は総じて

ワールド

カナダ与党、野党議員1人加入で多数派に迫る カーニ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポーランドが「核武装」に意欲、NATO諸国も米国の核の傘を信用できず
  • 2
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」の写真がSNSで話題に、見分け方「ABCDEルール」とは?
  • 3
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方...勝利のカギは「精密大量攻撃」に
  • 4
    生き返ったワグネルの「影」、NATO内部に浸透か
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 9
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 10
    中道「大敗北」、最大の原因は「高市ブーム」ではな…
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 4
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 7
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 8
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 9
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 10
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中