最新記事

投資

急落トルコリラ「底値」見誤りさらに大損する投資家の心理

2018年8月14日(火)13時00分
中村 貴司(東海東京調査センター主任調査役シニアストラテジスト) ※東洋経済オンラインより転載

行動ファイナンスの世界では、投資家は自身の予想能力の正確性に対して過信し、また世の中の出来事をコントロールする能力がある自信過剰の傾向があると言われます。

それなりに知っていても、投資に勝てるとは限らない

たとえば、自信過剰をもたらす1つの要因として、「知識についての幻想」があります。人は、自分の知識が高まると自分の予測の精度も高まると信じてしまう傾向です。今回、失敗した日本の投資家がこういったバイアスにとらわれてしまった可能性もあります。

「トルコリラの動向については、毎日ニュースを読んで把握しているつもり」。確かにトルコの人口は約8000万人で若年層の拡大で内需が活性化され、将来性も高く、欧州や新興国向けの輸出など自動車産業や国内の観光業などにも強みがあることは、証券会社や銀行のマクロ経済レポートを読んでも明らかです。

「目先の高金利だけに飛びつき、簡単にだまされてしまうほかの投資家とはわけが違う。ここからは長期のファンダメンタルズを考えれば買いで大丈夫だ。トルコリラについてはいろいろな角度から調べたし、自分はまわりの誰よりも勉強している。だからこそ、正しい投資の意思決定ができ、利益を上げられるはずだ」

上記のような「知識についての過度な自信や幻想」を持っている人は特に勤勉で勉強熱心な投資家に多いと言われます。「日本人は勤勉」と言われますが、知識を増やしたからといって、必ずしも相場は理論どおりに動いてくれません。実際、市場は投資の教科書には載っていないトランプのツイート戦略やエルドアンの独裁政治に一喜一憂しています。自信過剰からリスクをとってトルコリラ投資をした結果、失敗してしまったと言えるかもしれません。

そのほかにも、投資家は成功と失敗の確率が半々であっても、成功すればそれを自分の能力によるものだと思い、失敗すればそれを外部要因だと考える傾向があると行動ファイナンスでは述べています。これを「自己帰属バイアス」と呼びますがこれも投資家の自信過剰をもたらしてしまう1つの要因と言われています。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米百貨店コールズ、通期利益見通し引き上げ 株価は一

ワールド

ウクライナ首席補佐官、リヤド訪問 和平道筋でサウジ

ワールド

トランプ政権、学生や報道関係者のビザ有効期間を厳格

ワールド

イスラエル軍、ガザ南部に2支援拠点追加 制圧後の住
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    「どんな知能してるんだ」「自分の家かよ...」屋内に侵入してきたクマが見せた「目を疑う行動」にネット戦慄
  • 3
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪悪感も中毒も断ち切る「2つの習慣」
  • 4
    【クイズ】1位はアメリカ...稼働中の「原子力発電所…
  • 5
    「ガソリンスタンドに行列」...ウクライナの反撃が「…
  • 6
    「1日1万歩」より効く!? 海外SNSで話題、日本発・新…
  • 7
    イタリアの「オーバーツーリズム」が止まらない...草…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    「美しく、恐ろしい...」アメリカを襲った大型ハリケ…
  • 10
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 9
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 10
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中