最新記事

基礎知識

牛肉はOKだがチーズバーガーはNG ユダヤ教を15の疑問で読み解く

2018年7月6日(金)10時25分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

Q 03. 聖典は何ですか?

ヘブライ語で「神の教え」と称されるトーラーが聖典で、広義にはタルムードも含む。ユダヤ教では2つのトーラーがあるとされ、成文トーラーである「タナハ」および口伝トーラーに基づく伝承を記録した法典「タルムード」がそれにあたる。ユダヤ教の聖書はキリスト教の旧約聖書にあたり、内容はまったく同じだが、書物の順序が異なっている。聖書は「トーラー」(モーセ五書)と「ネヴィイーム」(預言書)と「クトゥヴィーム」(諸書)の3つの部分よりなり、3つの書のヘブライ語の頭文字を取り総称して「タナハ」、または聖典の意で「ミクラ」とも呼ぶ。

なかでもトーラーは、神がユダヤ人に与えた啓示の書として神聖視されており、安息日のシナゴーグの礼拝では1年を通してトーラーを朗読する。敬虔なユダヤ教徒はタルムードおよびトーラーの学習を最も重要な戒律とし、タルムードの学習は神への礼拝として理解されている。

Q 04. 最も重要な教義は何ですか?

神が唯一の主だと信じ、戒律を実践すること。ユダヤ教信仰を支える最も重要な基盤は、宇宙を超越した世界の創造主にして唯一なる神の存在を信じ、その神がイスラエルを世界創造の業の完成の目的のために選んだということ。ユダヤ人にとって「神を信じること」とはすなわち神が与えたトーラーの戒律を「守り、実践すること」であり、神の意志である社会正義、他者に対する慈愛、憐れみ、完全なる道徳および倫理の理念を、この現世において具現化させることにほかならない。

Q 05. いつ、どこで、どうやって祈りますか?

1日3回、シナゴーグなどで祈祷書を使って祈る。ユダヤ教では朝、午後、晩に祈祷を捧げることが義務づけられている。祈祷を捧げるのは家や外出先でも可能だが、主としてシナゴーグで行うことを重視する。この祈祷はヘブライ語で「ハ・テフィラー」と呼ばれ、その中でも18の祈祷文「シュモネ・エスレ」からなる「アミダー」(立祷)や、唯一神信仰を告白する申命記の一節「シェマア」が最も重要な祈祷だ。これらの祈祷は「スィドゥール」と呼ばれる祈禱書に記載されており、それを用いて祈りを唱える。

アミダーなどの祈祷は個人でも可能だが、正式には成人(13歳以上)の男子が10人以上集まって形成するミニヤンと呼ばれる集団で行うことになっている。トーラーの朗読はミニヤンが成り立たなければ行うことはできない。一般的にミニヤンの集まる場所はシナゴーグとなるが、成人男子が10人以上集まればどこであってもミニヤンは成立することから、祈祷には公的な性格が強く打ち出される。

Q 06. ラビとはどんな人ですか?

「ラビ」とはヘブライ語で「私の師」という意味で、聖書を解釈する法学者である。元来は、トーラーおよびタルムードを習得し、その解釈と法的判断をする資格を有する者に与えられる。彼らは本来、ユダヤ共同体を運営する執政者かつ裁判官であり、聖書とタルムードを研究し、教授する法学者であった。しかし、近年は共同体の世話役としての趣が強くなってきており、シナゴーグの礼拝時における祈祷の先導や、結婚式などの司式、食事規定や清浄規定に関わる監督など、職務内容は多岐にわたる。

Q 07. どうやったら信者になれますか?

あなたもユダヤ教徒になれるが、入信には長年の学習と指導が必要。数年間ラビに師事してヘブライ語、聖書、ユダヤ人の歴史、戒律を学ぶことになる。筆記試験とユダヤ法廷が審査する口頭試験をパスし、男性であれば割礼をした後に浸水儀礼を受け、女性であれば浸水儀礼を経てユダヤ教徒となる。

Q 08. どんな儀式や行事がありますか?

ユダヤ教では1年を通じてさまざまな儀式や祭り、行事がある。代表的なものに、7日に一度労働を一切やめて心と身体を休ませる「安息日」、奴隷であった祖先がモーセに率いられてエジプトから脱出した出来事を記念した「過越(すぎこし)祭」、通過儀礼として生後8日目の男児の性器の包皮を切り取る「割礼」などがある。このような儀式や行事が世界中のユダヤ・コミュニティを支え、民族の団結を強化し、そのアイデンティティを次世代に継承していく。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米財務長官、複数住宅を同時に「主たる住居」と申告=

ワールド

欧州委、イスラエルとの貿易協定停止を提案 ガザ侵攻

ビジネス

カナダ中銀、0.25%利下げ 政策金利は3年ぶりの

ビジネス

米一戸建て住宅着工、8月は7%減の89万戸 許可件
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 4
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    「アフリカでビジネスをする」の理想と現実...国際協…
  • 10
    「60代でも働き盛り」 社員の健康に資する常備型社…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中