最新記事

基礎知識

牛肉はOKだがチーズバーガーはNG ユダヤ教を15の疑問で読み解く

2018年7月6日(金)10時25分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

Chalffy-iStock.

<どんな神様を信仰しているのか、ラビとはどんな人物か、食べてはいけないものはあるのか......。ユダヤ教のこと、どれだけ知っていますか>

6月下旬、ベルギーの女性モデルが全裸で日光浴をしている写真がSNSに投稿され、イスラエルで大問題になった。撮影場所が、エルサレムにあるユダヤ教の聖地「嘆きの壁」を見下ろす建物の屋上かテラスと推測されるからだ。

「解放への道」と題されたこのヌード写真に「嘆きの壁」ははっきりと写っている。一方、すぐ近くにあるイスラム教のモスク(礼拝所)は写っていない。写真家は意図的にモスクを外したわけではないと主張しているが、もし写っていたら、イスラム教徒たちも激しく抗議しただろう。

ここで、「エルサレムにモスク?」と思った人もいるかもしれない。確かにエルサレムはイスラエルが全域を実効支配しているが、実はユダヤ教だけでなく、イスラム教とキリスト教の聖地もある古都だ。

こんなニュースを聞いたときにも、宗教の知識があれば飲み込みやすい。実際、世界で何が起こっているかを理解するために、馴染みのない宗教についても知っておいたほうがいい。

宗教とはいったい何だろうか。信仰する人々の心に平和や救いをもたらす一方で、大きな対立をも生んでしまう。宗教はなぜ生まれ、現代においてどんな役割を担っているのか。

とりわけユダヤ教は、信者数は世界で約1400万人と、キリスト教(約21億6000万人)、イスラム教(約16億人)、ヒンドゥー教(約10億人)、仏教(約3億6000万人)より圧倒的に少ないのに存在感が大きく、日本人にとって"ナゾの宗教"かもしれない。

そうした疑問の解消に役立つのが、『Pen BOOKS 知っておきたい、世界の宗教。』(ペン編集部・編、CCCメディアハウス)だ。

ユダヤ教のみならず、キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教、仏教、そして神道と、6つの宗教の基礎知識を網羅し、信徒たちの暮らしや宗教芸術にもスポットを当てた本書。その「15の疑問で理解する、6宗教の基礎知識。」のパートから、ユダヤ教に関する箇所を抜粋する。

penbreligion-cover180.jpg
Pen BOOKS 知っておきたい、世界の宗教。
 ペン編集部 編
 CCCメディアハウス

【参考記事】ムスリムに恋をしたら結婚できる? 今さら聞けないイスラム教15の疑問

◇ ◇ ◇

Q 01. どんな神様を信仰していますか?

唯一絶対の主なる神(アドナイ、ハシェム)を信仰する。ユダヤ教では神は唯一絶対であり、宇宙を超越した存在である。ユダヤ人は神に絶対の信頼を寄せ、「天にいます我らの父(アビィヌ・シェ・バシャマイム)」と呼ぶ。神と人間には介在者はおらず、人間は聖典の学習および戒律の実践を通して直接神との関係をもつとされる。また、神の名をみだりに唱えることは禁じられており、敬虔なユダヤ教徒は神に対してヘブライ語の神聖4文字で「主」を意味する「アドナイ」、あるいは「ハシェム」と呼びならわす。

Q 02. いつ、誰が始めたのですか?

ユダヤ教の発祥時期・創始者には諸説あるが、重要人物はアブラハムとモーセである。聖書の「創世記」12章によれば、唯一なる神はアブラハムを選び出し、彼と彼の子孫にカナンの地(現在のイスラエル)を与え、子孫の繁栄の約束をしたとされる。そして時を経て紀元前13世紀頃、モーセは奴隷の苦役にあえいでいたイスラエルの民のエジプト脱出を導き、シナイ山で神より啓示の法であるトーラーを授かる。彼らの存在なくして、ユダヤ教信仰の始まりは語れないだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

香港警察、手配中の民主活動家の家族を逮捕

ビジネス

香港GDP、第1四半期は前年比+3.1% 米関税が

ビジネス

アングル:替えがきかないテスラの顔、マスク氏後継者

ワールド

ウクライナ議会、8日に鉱物資源協定批准の採決と議員
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 7
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中