最新記事

人種問題

優秀過ぎるアジア人学生「締め出し」でハーバード大学が犯した罪

2018年6月25日(月)19時30分
リー・ハビブ(セーラム・メディア・グループ副社長、ラジオ司会者)

ハーバードはマイノリティーの受け入れに積極的なことでも知られるが、アジア系だけは例外らしい HaizhanZheng-iStock.

<成績も課外活動も優秀なのに「人格点」が他の人種より低いので不合格?──ハーバードはこんな手でアジア系学生の数を減らしている疑いがある>

ハーバード大学はその学術水準の高さもあって、教育の世界では世界最高ブランドと言っていい存在だ。進歩的な理想を掲げ、マイノリティの学生の受け入れに積極的なことでも知られている。

ただし、同じマイノリティでもアジア系となると話は別らしい。

先ごろハーバードは、アジア系の学生たちに人種差別をしたとして訴訟を起こされた。それも差別の理由は、アジア系が優秀過ぎたから

こんな結果を生み出すのだから、昨今の進歩主義とはたいしたものだ。

訴訟を起こしたのはアジア系アメリカ人の学生のグループだ。彼らは人種ゆえに大学に差別されたと主張しており、それを証明する数値データもあるという。

学生側の申し立てによれば「アジア系アメリカ人の学生の合格可能性が25%だったとしたら、(同じ成績の)白人であれば35%、ヒスパニックなら75%、アフリカ系なら95%だった」という。

ニューヨーク・タイムズが報じたところでは、訴訟ではハーバードによる13年の学内調査の結果も取り上げられた。当時の全学生に占めるアジア系アメリカ人の比率は実際には19%だったが、もし学業成績のみで合否判定をしていれば43%に上がった可能性があるという。

同じことをアフリカ系にすれば「犯罪」だ

それにしても、なぜそんなに大きな差が生じるのだろう。学業以外の要素も合否判定の材料になるが、アジア系はそのあたりでいい点が取れないのだろうか。いや、実は学業以外の課外活動や面接でも、アジア系はいい成績を取っている。

一方、16万人近い学生の記録を分析した研究では、アジア系アメリカ人の入学希望者は「前向きな性格」「好かれやすさ」「勇気」「親切」「広く尊敬を集めている」などの項目でことごとく他の人種の学生より評価が低かった。

そんなわけがあるものか。

もしハーバードが組織的に、合格に値するアフリカ系アメリカ人の学生をこんないい加減な根拠で締め出していたら、捜査機関が黙っていないだろう。

ハーバード側はアジア系アメリカ人の学生への差別的扱いを否定している。だが一方で、合否判定の内情を明らかにしようとはしない。これは一種の企業秘密であり、それを公にしたら他の名門大学との人材獲得競争で不利になるというわけだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中