最新記事

脳神経細胞、年齢に関係なく増え続けることが判明

2018年4月10日(火)19時11分
松丸さとみ

脳神経細胞、年齢に関係なく増え続けることが判明 Firstsignal-iStock

<米コロンビア大学の研究で、脳神経細胞は年齢を重ねても新しく生まれると突き止められた>

育ち切っていないニューロンが高齢者の脳に

大人になると脳細胞は増えることがなく死滅する一方だ、というのがこれまで通説になっていた。しかしこのほど発表された研究により、人間は年齢にかかわらず生涯ずっと脳の神経細胞(ニューロン)を増やしていることが分かった。

米コロンビア大学で神経生物学を教えるモーラ・ボルドリーニ准教授が、4月5日付の学術誌「セル・ステム・セル」に発表した。

研究チームは、生前健康だったが事故で突然亡くなった14〜79歳の28人の海馬(記憶や学習を司る脳の部分)を検視した。

コロンビア大学の報道発表文によると、これまでこの分野の研究では、新たに生まれるニューロンの数は歳とともに減り、ある程度の年齢に達すると増えることは全くなくなると一般的に考えられていた。

神経画像の研究では、成人の海馬が成長を続ける様子が見られたものの、これは新しいニューロンが発生しているというより、「既存のニューロンが大きくなったもの」または「血管や脳内の支援組織が拡大したもの」と見る科学者が多かったという。

そのため、ボルドリーニ准教授は今回検視を行なった際に、そのような結果が見られるだろうと予想していたという。

しかし実際は、「私たちが調べた最年少の人と最高齢の人のいずれにおいても、ニューロン前駆細胞(のちにニューロンになる細胞)や、まだ成長途中のニューロンが何千個と見つかった」と准教授はコロンビア大学の報道発表で述べている。英紙インディペンデントは、海馬のサイズも年齢による違いが見られなかったと伝えている。

エクササイズや食べ物で脳機能が改善も

ただし、年齢で違いが見られた部分もあった。血管の数や神経同士のつながりが、年齢が高い方が少なかったのだ。つまり、脳は年齢にかかわりなく新しいニューロンを作ることができるが、ニューロン同士で新しいつながりを作る力や酸素を運ぶ能力は衰えるということだ。そしてこれが、歳とともに認知力などが衰える理由だと考えられるという。

さらなる研究が必要ではあるが、脳内での血流の改善がこうした衰えに有効であり、エクササイズや食生活、薬などが改善に役立つだろう、とボルドリーニ准教授は述べている。なおタイム誌によると、身体的なエクササイズが認知能力の衰え防止に有効だとの研究結果が過去に複数発表されている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ECB当局者、6月利下げを明確に支持 その後の見解

ビジネス

中国人民銀には追加策の余地、弱い信用需要に対処必要

ビジネス

訂正(17日配信記事)-日本株、なお魅力的な投資対

ワールド

G7外相会議、ウクライナ問題協議へ ボレル氏「EU
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画って必要なの?

  • 4

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 5

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 6

    【画像】【動画】ヨルダン王室が人類を救う? 慈悲…

  • 7

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 8

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 9

    インド政府による超法規的な「テロリスト」殺害がパ…

  • 10

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中