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朝鮮半島情勢

中国、米朝首脳会談は「双暫停」のお蔭――全人代第三報

2018年3月12日(月)15時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

それは今後の米朝首脳会談の性格を見誤らせる危険性があるので、客観的推移を簡単におさらいしておきたい。

北朝鮮と韓国を威嚇してきた中国

昨年から何度も本コラム欄で触れてきたが、北朝鮮と唯一の軍事同盟国である中国は、これまで北朝鮮に対して「3枚のカード(中朝軍事同盟破棄、断油、中朝国境線完全封鎖)」をちらつかせて「対話により問題解決せよ」と迫ってきた。中朝は「米韓合同軍事演習中止」「THAADの韓国配備反対」「朝鮮戦争休戦協定に従って韓国から米軍を撤退させ平和条約を結べ(中国軍は休戦協定を守り1958年に完全撤退)」などにおいて利害が一致している。したがって北朝鮮の平昌五輪参加と南北対話誘導の背景には中国の「双暫停」戦略があった。

一方、韓国に対しては、付設するレーダーで中国の東北あるいは華北一帯の軍備配置が見えるTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)を配備したことに対して、中国は韓国に経済報復を行なってきた。北京寄りの文在寅(ムン・ジェイン)政権が誕生すると、昨年10月末に中韓合意文書を取りつけた。経済報復を解除してほしければ「3つのノー(米国のミサイル防衛体制に加わらない。日米韓安保協力を軍事同盟に発展させない。THAADの追加配備は検討しない)」を実施せよと要求した。

中朝軍事同盟があるため、日米韓の協力による対北朝鮮包囲網を中国は対中包囲網に等しいと警戒してきた。だから何としても日米韓を離間させたいと模索してきたのである。

北朝鮮にも韓国に対しても威嚇により「双暫停」戦略に沿って動けと迫ってきた中国は、結果的に南北融和と米朝対話を誘導したことになる(これらに関しては、数多くのコラムを書いてきたが、たとえば 1月4日付けコラム「北の対話路線転換と中国の狙い――米中代理心理戦争」などを参照して頂きたい)。

しかし金正恩(キム・ジョンウン)委員長は、なかなかの策略家。中国の意図に沿って動いたかに見えたが、今年元旦に平昌五輪参加を表明するに当たり、「朝鮮民族の団結強化により半島問題を解決する」と強調して、中国に一矢を報いたのだ。そして北朝鮮は「日米は100年の宿敵、中国は1000年の宿敵」とまで言うようになる。これら一連の相克に関しては、1月12日付のコラム<南北対話「朝鮮民族の団結強化」に中国複雑>でも触れた。

それでも中国は、米朝が対話路線に入ることを促し続けた。中国の現在の軍事力は米国に遥か及ばないので、いま戦争をされると困るからだ。

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