最新記事

セクハラ

韓国に吹き荒れる「Me Too」 私も危なかった

2018年3月2日(金)19時43分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

今回、始まったMe Tooの動きは、突然発生したものなのか? 実は以前から女性の人権に対する動きは高まっていた。特に、2年前に江南駅で起こった女性殺傷事件以降、「ヨソンヒョモ(=女性嫌悪)」という言葉が定着。当時、犯人の男が「女性なら誰でもよかった」と発言したことに多くの女性が衝撃を受けた。また、2017年8月には、匿名女優がキム・ギドク監督に作品内で暴行・セクハラを受けたと告訴し、その後韓国芸能界では、撮影現場での過激すぎる演出に異議を訴える女優が続々と登場することとなった。


■キム・ギドク監督を告発する団体による記者会見を伝えるニュース YTN / YouTube

このような動きからフェミニズムの意識が韓国女性の中でだんだんと高まっていったところに今回のMe Too運動である。今訴えている女性たちも最近被害にあったわけではなく、数年〜十数年以上前のセクハラ事件を告発している。今まで泣き寝入りしていた女性たちが、この大きな流れに乗って背中を押され、ついに声を上げられるようになったのだ。

何か社会的な問題や関心事が発生した時、対応が早いのが韓国の特徴である。ムン・ジェイン大統領は今回のMe Too運動に対し、2月26日「積極的に支持をする」と発表。各省に「ジェンダー差別根絶対策を立てること」「被害者からの告訴があった場合、刑事告訴意思を確認し、親告罪条項が削除された 2013年6月以後の事件は被害者告訴がなくても積極的に捜査すること」など具体的な指示を出した。

また、翌27日には「小・中・高等学校でのフェミニズム教育の義務化」を発表した。韓国政府が毎日行っている生放送「11時50分青瓦台です」では、ユン・ヨンチャン国民疎通主席が出演、「フェミニズム教育が必要だと請願してくださった国民の皆さん、一気に多くのことを解決することはできないが、政府が着実に改善を進めていくという点を理解していただきたい」と伝えた。

あの"メガネ先輩"の記事も巻き込まれ......

日々いたるところでMe Tooの告発が出てくる韓国では、ジェンダーに関する問題については過剰とも言えるピリピリ感が漂っていて、平昌オリンピックについてのメディアの取り上げ方にも火の粉が降りかかった。問題になったのは意外にもハフポスト日本版が、今大会で注目を集めたカーリング女子韓国代表チームを取り上げた記事だ。メガネ先輩ことキム・ウンジョン選手が、準決勝の日本戦に勝利し涙する写真とともに、「冷静な選手から、一人の女性に戻った瞬間」という文章で掲載した。この記事に対して、同じハフポストの韓国版ハフポストコリアが「性差別的だ」と抗議。日本版が記事を書き換えることになった。言い回しだけの問題としても性別を強調することで女性差別と受け取られかねない書き方をやめようという配慮が伺える。

ハフポストコリアがハフポスト日本版への抗議の経緯を説明したツイート

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、ベネズエラ石油「封鎖」に当面注力 地上攻撃の可

ワールド

英仏日など、イスラエル非難の共同声明 新規入植地計

ビジネス

ロ、エクソンの「サハリン1」権益売却期限を1年延長

ビジネス

NY外為市場=円が小幅上昇、介入に警戒感
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中