最新記事

セクハラ

韓国に吹き荒れる「Me Too」 私も危なかった

2018年3月2日(金)19時43分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

韓国の#MeToo運動で今、一番世間を騒がせている俳優オ・ダルス(左)とセクハラを実名で告発した女性オム・ジヨン(右) JTBC ニュースルームより

<平昌五輪の話題で盛り上がった韓国。だがその影で大きな社会問題として韓国の#MeToo運動が巻き起こっている>

ハリウッドの大物プロデューサー、ワインスタインのセクハラ告発から端を発した「#MeToo」運動は、韓国の映画・演劇界にも飛び火し、広がりを見せている。

まず、2月中旬に演劇界の大御所演出家イ・ユンテクによるセクハラ事件が発覚。被害者女性がフェイスブックに載せた書き込みが発端となった。これに伴い、イ・ユンテクは公式謝罪会見を開き罪の一部を認める形となったが、28日には16人の被害者が101人の弁護士団を引き連れて集団訴訟の申し立て、今後に注目が集まっている。

一方映画界では、日本でも公開された『弁護人』にも出演していた俳優チョ・ミンギが、教え子であった匿名Aさんにセクハラをしたと訴えられ、こちらも認めて謝罪している。Aさんは2015年にチョ・ミンギから送られてきたカカオトークのメッセージも公開され、その過激な内容が話題を呼んだ。こちらも被害者は一人ではなく数人からセクハラ被害が報告されている。その他にも、人間国宝の民族舞踊家ハ・ヨンブや教科書にも作品が載っている詩人のコ・ウンなど、著名文化人のセクハラ行為が次々と明るみに出ている。

その中でも、今一番注目されているのが韓国の名バイプレーヤーとして有名なオ・ダルスの一件だ。特徴的な顔立ちと人間味あふれるキャラクターで、数多くの映画やドラマに出演しているため、韓国のドラマや映画を見たことがある人なら写真を見ただけで「あぁ、あの人ね」とすぐに思い出せるかもしれない。

被害者がニュース番組に実名・顔出しで登場して告発

オ・ダルスのセクハラ疑惑が発覚したのも、SNSからの書き込みが発端だった。冒頭にも書いたイ・ユンテクの事件を報じたネットニュースのコメント欄に、オ・ダルスの被害女性が書き込みをしたことがきっかけだった。当初オ・ダルスは事務所を通じて全面否定した。これに対し書き込んだ女性はケーブルテレビ局JTBCの番組「ニュースルーム」にインタビュー出演し、セクハラ行為について証言。しかし、オ・ダルス側はこれに対しても事実無根を主張、女性に対し告訴するとも言いだした。ところが翌日、同番組に別のオム・ジヨンという女優が実名で登場し自らのが受けたセクハラを告白し、状況が一変した。

オム・ジヨンは、オ・ダルスが事実を認めると思っていたのに、彼が否定する様子を黙って見ていられなかったという。彼女は、今は演技を指導する立場でもあり、自身の若い教え子たちが同じ被害に遭わないように実名・顔出しの証言を決めたと訴えた。そして28日、オ・ダルスは一連の告発を認め書面で2人の女性に謝罪し、全ての罪を受け入れると公表した。

数多くの作品に出演している人気俳優だけに、製作側にも影響を与えている。今現在すでに4本の映画を撮影し終えていて、そのうちの1本『隣人』は主演作品ということで、別の俳優での差し替えなどが難しく、公開方法を検討している状態だ。昨年末公開されて1400万人動員の大ヒットとなった『神と共に』の続編は、オ・ダルスの出演シーンを再編集、一部を再撮影して予定通り夏の公開を目指すという。また今春放送開始予定のtvNドラマ『私のおじさん』の降板も決まった。


オ・ダルスを告発するインタビューを放送したJTBCニュースルーム JTBC / YouTube

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税の影響で

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中