最新記事

教育

東京と地方の文化格差を助長する、都内大学の定員抑制

2017年9月7日(木)14時15分
舞田敏彦(教育社会学者)

地方の家庭にとって学費と家賃、生活費の負担はますます重くなっている Ababsolutum-iStock.

<経済的事情から地方での地元大学志向が顕著になっている。だが定員抑制などで若者の地域移動を抑えることは、東京と地方の文化的格差につながるおそれがある>

大学進学の地元志向が強まっているという。仕送りなどの経済的負担が大きいために、地元の大学に通って欲しいと願う家庭が増えているのだろう。生徒の地元志向も高まっているようで、甲南大学の阿部真大准教授は「東京で苦学するより、親の経済力に頼れる地元にいる魅力が大きいのではないか」と指摘している(2016年5月1日、朝日新聞)。

地方は所得水準が低く、大学の学費負担だけでも大変なのに、これに家賃や生活費などが加わる「ダブル」の負担は重い。最近、学生のブラックバイトや奨学金借入による生活破綻が問題になっているが、その多くは地方から都市に出てきている「苦学生」ではないだろうか。

地元志向の高まりは、統計でも確認できる。4年制大学入学者のうち、自分の出身高校と同じ県内の大学に入った者は何%いるのか。バブル末期の1990年と2017年現在の断面を比べると<図1>のようになる。日本の経済状況が悪化する前の頃と、最近の状況の比較だ。

maita170907-chart01.jpg

1990年春の大学入学者は48万6946人、2017年春は61万694人となっている(浪人生を含む)。大学進学率が高まっているので、入学者の絶対数は増えている。

このうち出身高校と同じ県内(地元)の大学に入った者の割合を見ると、1990年の35.9%から2017年の44.1%に上昇している。激増というほどではないが、大学進学の地元志向は確かに強まっているようだ。

【参考記事】欧米の名門大学よ、 中国マネーに屈するな

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾総統、強権的な指導者崇拝を批判 中国軍事パレー

ワールド

セルビアはロシアとの協力関係の改善望む=ブチッチ大

ワールド

EU気候変動目標の交渉、フランスが首脳レベルへの引

ワールド

米高裁も不法移民送還に違法判断、政権の「敵性外国人
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 6
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 9
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 10
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中