最新記事

心理学

自分に「三人称」で語りかけるだけ! 効果的な感情コントロール法

2017年8月14日(月)15時30分
松丸さとみ

XiXinXing-iStock

<ミシガン州立大学などの実験で、自分に対して「三人称」で語りかけるだけで感情のコントロールがずっと楽になることが分かった>

三人称で自分と距離を作る

怒りやイライラなど、ネガティブな感情はできればすぐに手放したいものだが、なかなか難しい。しかしこのほど発表された実験で、自分に対して「三人称」で語りかけるだけで感情のコントロールがずっと楽になることが分かった。実験はミシガン州立大学とミシガン大学の心理学者が行なったもので、科学系の米ニュースサイト「サイエンス・デイリー」が伝えた。

方法はとても簡単で、通常、人は頭の中で一人称を使って話しているが、これをただ三人称に変えるだけだ。

サイエンス・デイリーが紹介した方法はこうだ。

例えば、ジョンという男性がいたとする。最近恋人に振られてしまい、気持ちが動揺している。ここでジョンが自分の感情に向き合い、「俺は何で動揺しているんだ?」と一人称で自問するより、「ジョンは何で動揺しているんだ?」と三人称を使って自分に語りかける、という具合だ。

ミシガン州立大学で心理学を教えるジェイソン・モーザー准教授によると、心の中の独り言を前述のように三人称にすることで、自分自身のことでありつつ他者を見るような距離感を作ることができるのだという。自分の体験から心理的な距離感を作ることで、感情がコントロールしやすくなるのだ。

ミシガン州立大学の実験

モーザー准教授のチームは、2種類の実験を行なった。まずは、実験の参加者に、中立的な画像と、例えば男性が銃を自分の頭に押し付けているなど、見る者が動揺してしまうような画像をそれぞれ見せた。参加者には画像を見た時の感情を、自分の心の中のおしゃべりを一人称と三人称にしてそれぞれ話してもらい、その際にどのような脳波の動きがあるかを観察した。

170.jpg

Credit: Michigan State University

動揺してしまう画像では、三人称で話した場合に、感情に関する脳の領域の動きが急速(1秒以内)に低下した。

研究チームはまた、自分に対するおしゃべりを三人称にすることがどれだけ努力を要するかを調べるために、努力に関する脳の活動についても調査した。

その結果、三人称で話す労力は一人称で話すものと比べ違いがなかった。モーザー准教授は、感情をコントロールする他の方法だと非常に努力が要されると指摘。そのため今回の実験のように心の中での独り言を三人称にすることが、感情の乱れをその場で沈める有効な手段になるとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:中国の再利用型無人宇宙船、軍事転用に警戒

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    日本人は「アップデート」されたのか?...ジョージア…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中