最新記事

アメリカ政治

もう過去の人? ご立派だが面白くなかったオバマの退任後初演説

2017年4月25日(火)21時00分
マシュー・クーパー

シカゴ大学で若者たちに市民活動の勧めを説くオバマ前米大統領 Kamil Krzaczynski-REUTERS

<オバマ前米大統領が退任後初の演説を行い、昔懐かしい気さくな語り口で若者らに市民参画を奨励したが、立派な「元大統領」になるにはまだまだ修行が必要だ>

バラク・オバマ前米大統領が月曜、久しぶりに表舞台に戻ってきた。(トランプには)見られない鋭い知性や満面の笑顔、自然体が醸し出すカリスマ性など、オバマがアメリカにもたらした良い面を改めて思い起こさせた。

米シカゴ大学で学生や高校生を前にした演説で、次世代の若者がもっと活躍できる社会に変えたいと語る姿はさすがだった。ステージに上りながら「私の留守中に何があったんだ?」とジョークも飛ばした。

ボランティアや大統領の職務について学生たちと面白おかしく会話を広げ、コミュニティー・オーガナイザーとして活動した自身の体験談を披露した。多様性に満ちた若者のリーダーたちが集まったイベント会場は、まるでドナルド・トランプが新大統領に就任した1月20日以前にタイムスリップしたかのようだった。

【参考記事】オバマ米大統領の退任演説は「異例」だった

だが、感動的なイベントでオバマは粋だったとしても、立派な「元大統領」としてはオバマはまだまだ修行中、というのも明らかだった。

退任後の名を上げる活動とは

もちろんオバマにはさまざまな活動が待っている。金儲けもその一つだ。月曜の演説は無償だったが、報道によると、今後は一講演で25万ドル以上の収入が入る。本を執筆し、その印税でシカゴ大学に大統領在任中の記録を収める図書館や大統領記念館を建設するほか、母校コロンビア大学にも研究機関を設立する考えだ。

現代の大統領が皆、引退後にやってきたことだ。ジェラルド・フォード元大統領は、大企業の取締役会に名を連ねることで荒稼ぎした。ジミー・カーター元大統領は慈善活動に精力的に取り組んだ。ジョージ・W・ブッシュ元大統領も、退役軍人の支援やアフリカでのHIV(エイズウィルス)撲滅運動に携わってきた。今のオバマは、その途上にいるのだ。

【参考記事】オバマ政権は北朝鮮ミサイル実験をサイバー攻撃で妨害していた

次世代を担う若者が政治やボランティア活動に参画しやすくするというオバマの発想は、前任者たちと重点が異なっているので好奇心をそそられる。ただ、オバマが開けようとしている扉は、既に開いている。いま全米の大学で、学生の行動主義を阻むものは何もない。

確かに若年層の投票率は低いが、時に政治が面白くなると跳ね上がる。オバマが大統領選に出馬した2008年が良い例だ。彼が民主党予備選でヒラリー・クリントンを破り、最後には共和党候補のジョン・マケインに勝てた原動力は、若い世代だった。

オバマは勘違いしている。若者が行動するのは誰かにやれと言われたときではなく、自分たちにとって政治が重要な意味を持つと感じたときだ。

【参考記事】フランス大統領選で盛り上がるオバマ・コール!

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

郵送投票排除、トランプ氏が大統領令署名へ 来年の中

ビジネス

ノルウェーSWF、ガザ関連でさらに6社投資除外

ワールド

ゼレンスキー氏、ロシアの「冷酷な」攻撃非難 「訪米

ワールド

イラン、協力停止後もIAEAと協議継続 「数日中に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に入る国はどこ?
  • 4
    AIはもう「限界」なのか?――巨額投資の8割が失敗する…
  • 5
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 6
    恐怖体験...飛行機内で隣の客から「ハラスメント」を…
  • 7
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 8
    40代は資格より自分のスキルを「リストラ」せよ――年…
  • 9
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 10
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 7
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 8
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 9
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 10
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中