最新記事

イギリス政治

エリザベス女王がトランプ氏を公式招待へ ──王室の占める位置とは

2016年11月25日(金)18時10分
小林恭子(在英ジャーナリスト)

Dominic Lipinski-REUTERS

<勝手に中米英大使を「指名」したトランプに面子を潰されたイギリスのメイ首相は、それでも米英関係を断絶させるわけにはいかないと、エリザベス女王にトランプを招待してもらう奥の手に出た。でもいったいなぜ、ここで女王が出てくるの?>(写真はエリザベス女王にお辞儀をするメイ首相)

何故、英女王の出番になった?

 最近になって、英女王が次期米大統領ドナルド・トランプ氏を来年6月か7月、英国に招待するというニュースが出た。

 表向きは英米2国の関係強化だ。確かにそういう意図があるのだが、ほかにもわけがあった。

 11月9日、米大統領選の翌日、不動産王トランプ氏が当選したことが判明した。英国の知的エリート層は一時的にパニックに陥った。まさか、人種差別的、女性蔑視的暴言を飛ばすトランプ氏が当選するとは思っていなかったからだ。 

【参考記事】トランプは、ヨーロッパを不安にさせる「醜いアメリカ人」

 メイ首相はトランプ氏の当選確定後間もなくして祝福のメッセージを送った。しかし、今月12日、ニューヨークを訪れた英国独立党(UKIP)のナイジェル・ファラージ氏が首相を差し置いてトランプ氏と面会してしまった。

 ファラージ氏は英国の欧州連合(EU)からの独立(=ブレグジット)をもたらした政治家だ。しかし、EUからの脱退を主張してきたUKIPは長い間泡沫政党と見られており、下院議員は一人しかいない。

 欧州議会議員のファラージ氏自身は下院選挙で何度も落選している。だが、トランプ氏とは親しい関係を築いてきた。トランプ氏の選挙運動に参加したことさえある。

「外国の政治家としては初」の会合を首尾よく達成してしまったファラージ氏。「メイ政権はファラージ氏に頼んで、トランプ氏との『仲介役』になってもらったらどうだろう?」-そんな声が出てきた。「ファラージ氏を駐米大使にしてもいいのでは?」とも。

【参考記事】トランプ氏が英国独立党党首ファラージを駐米大使に指名?──漂流する米英「特別関係」

 ファラージ氏に「先を越された」ことで悔しさいっぱいの政権が繰り出してきたのが、王室である。エリザベス女王は英国のヒエラルキーのトップにいる。この人以上に高い存在はなく、国内外の人気も抜群だ。ファラージ氏の上昇を止められるのはエリザベス女王しかいなったのである。

 英国民と王室の関係を振り返ってみたい。(以下、「EUマグ」に掲載された筆者の記事「英国で新王子が誕生」から一部を抜粋した) 

1000年近く続く王室制度

 イングランド王国(現在の英国の中心部分を占めるイングランド地方にあった)がフランスのノルマンディー公によって征服されたのが1066年。それから1千年近くにわたり、英国では王室制度が続いてきた。

 例外はクロムウェル父子が護国卿として実権を握った共和制(1649-59年)のみだ。

 英国は現在、立憲君主制を取る。「君臨すれども統治せず」の原則は、国王の権限を制限したマグナ・カルタ(1215年)、権利の章典(1689年)などを経てこの形となった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日仏首脳会談、イラン情勢「早期沈静化に向けた意思疎

ビジネス

米住宅ローン金利、6.57%に上昇 昨年8月以来の

ワールド

ロシア 、 ドンバス地域のルハンスク州完全掌握と発

ビジネス

英3月製造業PMI低下、中東紛争でコスト急上昇
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 4
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 5
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 6
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 7
    北京に代わる新都市構想は絵に描いた餅のまま...大幅…
  • 8
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 9
    「え、なんで?」フライト中に操縦席の窓が覆われて…
  • 10
    韓国・週4.5日労働制が問いかけるもの ──「月曜病」解…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中