最新記事

人権問題

中国で性奴隷にされる脱北女性

2016年8月26日(金)15時30分
パク・ジヒョン(人権活動家、人身売買被害者)

REUTERS

<北朝鮮の弾圧と飢餓を逃れて国境を越えた女性たちは、中国で人身売買の餌食となりさらに過酷な虐待の犠牲となる>(写真は中朝国境の豆満江)

 中国政府の自国民に対する人権弾圧はよく知られている。だが北朝鮮の抑圧や飢餓から逃れてきた女性たちが中国で人間以下の扱いを受けていることはあまり知られていない。私は真実を知っている。私も被害者の1人だったからだ。

 北朝鮮で大飢饉が起きた90年代以降、中国では脱北者、特に脱北女性を餌食にする人身売買が一大ビジネスになった。中国で働けば、子供にひもじい思いをさせずに済む――そんな甘言に乗せられ、若い母親はブローカーの手引きで国境を越える。だが待ち受けているのはそれまで以上に惨めな生活だ。

【参考記事】脱北少女は中国で「奴隷」となり、やがて韓国で「人権問題の顔」となった

 中国では脱北女性の需要は高い。工業化が急速に進んだため、農村部の若い女性は都市部や外国に流出し、残された男たちは嫁不足に悩んでいるからだ。彼らはブローカーに多額の報酬を払って妻を買う。

 脱北女性はノーと言えない。断れば、当局に垂れ込むとブローカーに脅されるからだ。強制送還されれば、北朝鮮に残った家族まで逮捕されかねない。女性たちは泣く泣く見ず知らずの男の妻になる。

 私が脱北を決意したのは98年。軍隊にいた弟が基地から逃亡した。弟が帰ってきたら逮捕しようと軍警察が家に張り込んでいた。病気で衰弱した父は私を呼んで耳打ちした。「弟を見つけて一緒に逃げろ」

 寝たきりでただ死を待つ父を残し、私は家を出た。父がどこに埋葬されたか今も知らない。

 弟と合流した私は、中国との国境を流れる豆満江を渡った。ブローカーは弟を助けるにはカネが要ると言い、私は中国人男性に5000元(約8万円)で売られることになった。その後弟とは一度も会っていない。

 他の脱北妻と同様、私の結婚生活も惨めなものだった。脱北妻は奴隷のように働かされ、性欲のはけ口にされる。けがをした妻や夫に飽きられた妻は別の男に「転売」されることもある。

 当局の目を恐れる脱北妻は、どんなにひどい目に遭っても助けを求められない。売春を強要されるリスクは常に付いて回る。妊娠すれば中絶しろと言われ、私のように中絶を拒否した場合、地元の病院での出産は望めない。生まれた子供は無国籍者となり、教育も医療も受けられない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均先物が急伸、高市首相が衆院解散を検討と報道

ビジネス

12月米雇用、5万人増に鈍化 失業率は4.4%に低

ワールド

イエメン分離派が分裂、一部が解散発表 指導者側は否

ワールド

イランが国外と遮断状態に、最高指導者「トランプ代理
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    「不法移民からアメリカを守る」ICEが市民を射殺、証…
  • 6
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 7
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 8
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 9
    「ならず者国家」への道なのか...トランプ、国連気候…
  • 10
    285カ所で抗議活動、治安部隊との衝突で36名死亡...…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 7
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 8
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 9
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 10
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中