最新記事

歴史問題

毛沢東は「南京大虐殺」を避けてきた

2015年10月13日(火)17時30分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 たとえば大陸の百度(baidu)で検索した場合、「毛沢東 南京大虐殺」と入れると、日によって異なるが200万項目ほどヒットする。そのほとんどは、この疑問への投げかけだ。

 中にはきちんと中国建国以来、いつまで南京大虐殺を隠し続けたかを調べた人もいる。この種の記事は多いが、信じていただくために一つだけ具体例を挙げよう。

 2014年12月31日付の西陸網(www.xilu.com)(中国軍事第一ポータルサイト)で「毛沢東時代はなぜ南京大虐殺に触れなかったのか――恐るべき真相)」というタイトルで陳中禹(う)という人がブログを書いている。 

 彼は1958年版の『中学歴史教師指導要領』の中の「中学歴史大事年表」の1937年の欄には、ただ単に「日本軍が南京を占領し、国民政府が重慶に遷都した」とあるのみで、一文字たりとも「南京大虐殺」の文字はないと書いている。この状況は1975年版の教科書『新編中国史』の「歴史年表」まで続くという。

 ちなみに、毛沢東が逝去したのは1976年。陳氏によれば、1979年になって、ようやく中学の歴史教科書に「南京大虐殺」という文字が初めて出てくるとのことだ。

 他の情報によれば「1957年の中学教科書にはあったが、60年版では削除されていた」とのこと。実際、確認してみたが、たしかにその時期、南京大虐殺を書いた教科書が江蘇人民出版社から出たことがある。しかし、その後消えてしまっている。

 200万項目ほどヒットする関連情報の中に、「1980年代に入ると日本の歴史教科書改ざん(美化)問題があったため、中国の一般人民は初めて南京で日本人による大虐殺があったことを広く認識し始めた」というのが多い。それによれば人民日報が初めて「南京大虐殺」に関して詳細に解説したのは1982年8月で、その書き出しは「日本の文部省の歴史教科書改ざん問題」から始まっているとのこと。

 そのため大陸の多くのネットユーザーは、「中国人民は日本の右翼に感謝しないとねぇ。なんたって、彼らがこうやって歴史歪曲を始めようとしなかったら、中国人民は永遠に南京大虐殺のことを知らないまま、生きていたのかもしれないんだから」と、皮肉を込めて書いている。

 ちなみに、「南京大虐殺記念館(中国名:侵華日軍南京大屠殺遇難同胞紀念館)」は、日中戦争勝利40周年記念に当たる1985年8月15日になって、ようやく建立された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ高官、「国益守られる」と評価 有志国会合

ビジネス

ユーロ圏消費者物価、12月2%に減速 ECB目標と

ビジネス

独失業者数、12月は予想下回る増加 失業率6.3%

ビジネス

シェブロン、ルクオイル海外資産入札でPEと連携 2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが「手紙配達」をやめた理由
  • 4
    「見ないで!」お風呂に閉じこもる姉妹...警告を無視…
  • 5
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 6
    「悪夢だ...」バリ島のホテルのトイレで「まさかの事…
  • 7
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 8
    若者の17%が就職できない?...中国の最新統計が示し…
  • 9
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 10
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 9
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 10
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中