最新記事

エネルギー

地球温暖化を知りながら排出規制を妨害した石油メジャーの罪

石油メジャーの設立したロビー団体が排出規制に動く米政府に圧力をかけ続けた

2015年9月18日(金)16時50分
ゾーイ・シュランガー

今そこにある危機 地球温暖化が危機的レベルにまで進行することは70年代から予見されていた David Gray-REUTERS

 石油メジャーのエクソン(現在のエクソンモービル)は、地球温暖化が一般的に知られるよりかなり以前の70年代に、その影響を認識し、対応策も研究していた。しかしその後、「温暖化懐疑説」を広める方針へと転換し、排出ガスの削減目標を定めた京都議定書へのアメリカの署名をやめさせていた――。今週、そんな衝撃的な調査結果を、エネルギー関係のニュースサイト「インサイド・クライメット・ニュース」が公表した。

 調査によると、エクソンの経営陣は70年代後半、化石燃料の燃焼によって排出される二酸化炭素が、最終的には危機的なレベルの地球温暖化を引き起こすことを、社内の研究者たちから聞かされていた。このためエクソンは80年代を通じて、二酸化炭素に関する最新の研究に資金を投入していた。

 78年当時、エクソンの上級研究員だったジェームズ・ブラックは、こう書き残している。「今後5~10年の間に、人間はエネルギー戦略の転換に関する厳しい決断を迫られることになるだろう」。同様に82年、研究部長のエドワード・デービッドは、「世界が化石燃料の依存から脱却して、二酸化炭素を排出しない再生エネルギーへの転換を図る時代に突入したことは、疑いようがない」と、述べている。

 しかし80年代後半から90年代にかけて、エクソンは方針を180度反転させる。地球温暖化の科学的な研究は、排出規制など具体的な対応を実施する程には十分に検証されていないと主張する、そうした運動の先頭に立ったのだ。

 例えば89年、エクソンはシェルやBPなどと共に「グローバル・クライメット・コアリション」というロビー団体を立ち上げる。アメリカ政府に対して、排出ガス削減の取り組みをやめるよう圧力をかけるためだ。この団体はその後、初めて国際的な排出ガスの削減目標を定めた97年締結の京都議定書に署名しないよう、アメリカ政府に働きかけていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中