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東アジア

中国「戦勝70周年」行事は韓国外交への踏み絵

朴がロシアのプーチンと並んで軍事パレードに臨めば米韓同盟や米日韓の関係に大きく響く

2015年8月20日(木)17時30分
ジン・カイ(延世大学)

中国かアメリカか 朴大統領は中国の習近平国家主席を国賓としてソウルに迎えた(昨年7月) REUTERS

 韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は来月3日に中国の北京で開催される「抗日戦争勝利70周年」記念の軍事パレードに出席すべきか否か──この問題をめぐり、日中韓のメディアや識者たちが臆測をたくましくしている。

 例えば日本の共同通信によれば、米政府は韓国政府に対し、米韓同盟および米日韓3カ国の関係を損なう恐れがあるから出席してほしくないとの意思を表明したという。だが中国国営の中国新聞社は、そんな事実はないと韓国政府高官が否定したことを伝えた。

 一方、中国人民大学教授の時殷弘(シー・インホン)は、米政府の真意が中国というよりロシアのプーチン大統領を「孤立させる」ことにある可能性を指摘した。「ウクライナ危機以降、アメリカは同盟関係の国々が国際的な行事でプーチンと同席することを望まない」からだ。プーチンは既に、北京での70周年記念軍事パレードへの出席を表明している。

 ヨーロッパでは、EU諸国の首脳の多くが北京での記念行事全般への参加を見送るようだが、中国の報道機関によるとチェコのゼマン大統領は招待に応じるらしい。大統領報道官が「主権国家」としての決定事項だと述べたと伝えられている。

 行くべきか行かざるべきかという問題は、韓国にとって今後も米韓同盟にとどまるか、または中国の懐に入るかという二者択一の様相を呈してきた。少なくとも東アジアではそのように描かれている。

韓国のミドルパワー戦略

 そしてこの外交問題により、かねてから指摘される韓国の「ミドルパワー」戦略にまつわる逆説的な構図も浮き彫りになってきた。韓国の元外務次官の金聖翰(キム・ソンハン)によれば、ミドルパワーとは「国際的な視野を持って主体的な外交を展開する能力と意欲を有する中規模の国家」を意味する。韓国外交も国際的な視野で前進するなら、より広い舞台に出ていくべきだという。つまり、これまで重視してきた米韓同盟や米日韓3カ国の枠を超えるということだ。

 現在の韓国政府による対中外交は、国際的な視野とミドルパワー戦略を実現するための、いわば試薬ないしは触媒であると見なすことができる。

 北京での軍事パレード出席の是非については、韓国がそのパレードをどのような「視野」に収めるかという文脈で考えてみるといい。もちろん、第二次大戦における連合国の勝利を世界が祝うという型どおりの解釈も可能だ。

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