最新記事

米中関係

米大使が見たスパイ映画並みの中国政治

2012年7月3日(火)17時14分
メリンダ・リウ(北京支局長)

陳の親族には既に危害が

 5月末、山東省で自宅軟禁されている陳の兄の光復(コアン・フー)は、自宅を脱出して北京入りした。目的は、警察に逮捕された息子のために弁護士を探すことだった。自宅に押し入ってきた人たち(おそらく私服警官だろう)が暴力を振るい始めたとき、光復の息子は両親を守るためにナイフを取り出し、それを理由に身柄を拘束されたのだ。

 北京の米大使館を経由して、中国の反体制活動家が続々と欧米諸国に出ていくという事態は、米中両国政府共に望んでいない。

 陳の事件に関して本誌が中国外務省にコメントを求めると、厳しい言葉遣いの返信が記されたファクスが送り返されてきた。そこには、両国関係のために、アメリカは「今回の出来事から真剣に教訓を学び」「政策と行動を見直すべき」であると書かれていた。

 一方、クリントンは中国側に対してこう請け合っている。「このような事態が再び起きるとは思っていない」

 ロックが大使として着任したとき、中国のソーシャルメディア系のウェブサイトには、新しい大使の控えめな態度を絶賛するコメントがあふれ返った。リュックサックを肩に掛け、スターバックスでコーヒーを買うロックの姿を映した画像が至る所に出回った。

 しかし陳事件の後、中国政府系の新聞は、ロックについて辛口の人物評を載せている。ある北京の新聞はこう書いた。

「旅客機のエコノミークラスで北京にやって来て、自分でリュックサックを背負い、割引券を使ってコーヒーを買うなど、庶民派イメージを演出したまでは良かった。だが、その後の振る舞いを見れば、慎重に言葉と行動を選ぶ駐中国大使というより、ことあるごとに対立をあおる典型的なアメリカ人政治家としか思えない」

 ロック自身は、非難や中傷に動じず、この先に待ち受けている試練に心がくじけることもないようだ。「シアトルでWTO反対デモも経験したし、大地震に大洪水、森林火災も経験した」と、ロックは言う。「なるべく落ち着いて行動し、冷静さを失わないように努めるだけだ」

[2012年6月 6日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フロリダよりパリのディズニーへ、カナダ人

ビジネス

NY外為市場=ドル横ばい、米CPI受け 円は週間で

ビジネス

米国株式市場=3指数が週間で下落、AI巡る懸念継続

ワールド

トランプ氏、有権者ID提示義務化へ 議会の承認なく
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の定説に挑む、3人の日本人科学者と外科医
  • 4
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 5
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 6
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    毛沢東への回帰? それとも進化? 終身支配へ突き…
  • 9
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 10
    「賢明な権威主義」は自由主義に勝る? 自由がない…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中