最新記事

政策

揺らぐニッポン「原子力立国」の夢

世界で唯一原爆を投下された国を世界有数の原子力大国にしたエリート官僚の非現実的な大暴走

2011年7月21日(木)11時00分
ガバン・マコーマック(オーストラリア国立大学教授、東アジア研究家)

前代未聞 爆発を起こした福島第一原子力発電所を訪れた国際原子力機関(IAEA)査察官(5月27日) Reuters

 日本の歴史で2011年3月は、1945年8月と同じくらい大きな転機をもたらした時として記憶されるだろう。どちらの場合も、それまでの国家、経済、そして社会のモデルが打ち砕かれた。そしてどちらの場合も、その大きな要因の1つが原子力だ。

 広島と長崎を覆ったキノコ雲が、1930年代に関東軍の若い将校たちが選んだ道の終着地だったとすれば、東日本大震災と福島第一原発の暴走と終末論的な不安は、1950年代にエリート官僚と政財界が選んだ道の終着地だ。その遺産が原子力大国・日本だ。

 1945年は純粋な人災だった。2011年は天災によって引き起こされたが、人的要因がそれを大幅に悪化させた。

 広島と長崎に原子爆弾が投下されて以来、日本には原子力が絡むものは何であれ激しい拒否反応を示す「ヒロシマ症候群」ともいうべき風潮が広がった。このため日本政府がアメリカの核戦略に協力するときは、密約という形を取らねばならなかったし、原子力発電への取り組みも内密に進める必要があった。

 だから日本の原子力行政は、有権者の厳しいチェックを受けることがなかった。むしろ「原子力発電はいかに安全か」をアピールする大規模なキャンペーンが展開され、度重なる事故は隠蔽され、安全レベルもごまかされてきた。それがどんなにひどいものだったか、今ようやく明らかになってきた。...本文続く

──ここから先は7月20日発売の『ニューズウィーク日本版』 2011年7月27日号をご覧ください。
<デジタル版マガストアでのご購入はこちら
<デジタル版Fujisan.co.jpでのご購入はこちら
<定期購読のお申し込みはこちら
 または書店、駅売店にてお求めください

今週のカバー特集は「世界が語るフクシマ論」。悲劇を生んだ構造問題から脱原発までポスト・フクシマ時代を読み解きます。
■無視されたメルトダウン警告
■原子力村から今こそ脱却すべき
■原発なき世界の危険な未来図
■福島原発は廃炉にできない ほか

他にも
■メディア マードック帝国を揺るがす赤毛の女
■盗聴 哀れな英国流「マスゴミ」文化
■欧州銀行のストレステストは大甘査定? ほか
<最新号の目次はこちら

[2011年7月27日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は続伸、配当取りが支援 出遅れ物色も

ビジネス

午後3時のドルは156円前半へ上昇、上値追いは限定

ビジネス

中国、25年の鉱工業生産を5.9%増と予想=国営テ

ワールド

中国、次期5カ年計画で銅・アルミナの生産能力抑制へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中