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対談

ツイッターが変える日中の未来(2)

2010年11月4日(木)14時26分

津田:先ほどおっしゃった写真を撮る重要性について教えてください。

安替:今年2月、中国人アーティストの艾未未(アイ・ウェイウェイ)が芸術区の強制取り壊しに反対するデモを北京のメーンストリート長安街で行いました。89年の天安門事件以来、初の長安街でのデモだったんですが、どのメディアも取材に間に合わず、彼自身が携帯で写真を撮ってネット上にアップした。すると人民日報系の環球時報の英語版が1面でその写真を掲載しました。中国のネットユーザーはよく「無図無真相(写真がなければ真実とは認められない)」と言います。

津田:ツイッター4原則は日本のツイッターユーザーにとっても非常に参考になります。それで4原則についてもっとお聞きしたいのですが......。

安替:あと1つ「翻訳する」も加えて5原則でした(笑)。今年7月に広州市で環境問題に関するデモが起きたのですが、僕はそのツイートを逐一英語に訳しました。欧米の記者がこの問題にとても興味をもっていたからです。

津田:5原則の中の「コメント」と「抗議」はどう違いますか?

安替:「抗議」は行動主義のもっとも重要な部分。何かが起きたとき、現場に行くことが重要です。先日の重慶の反日デモで女性が警察に捕まったあと、たくさんのツイッターユーザーが彼女が監禁された派出所に押しかけました。行けない人は警察に電話をかけまくった。そういった力が警察への圧力になって、結果的に釈放につながりました。中国語で「囲観(ウェイグアン)」、日本語で言うところの「野次馬精神」ですが、それこそが「抗議」の表現なのです。

ツイッターの「コメント」は中国語にとても有利。中国語は1つの文字に意味がたくさん凝縮されているので、いろんなコメントを少ない言葉で表現できるからです。中国では何か事件が起きるとブロガーや記者や学者といったオピニオンリーダーのコメントに注目が集まります。ツイッターユーザーが彼らの主張をリツイートする際に必ずコメントをつけることで、主張に対するプラスの評価がどんどん広がっていく。

また重要なツイートに対してコメントするとき、僕は必ず中国語と英語でコメントします。僕はニューヨーク・タイムズで4年間働いていたのでアメリカメディアの考え方がよく分かります。CNNには英語のツイートを取り上げる番組がたくさんあるのですが、僕が英語でツイートすれば取り上げられる可能性は高くなる。

去年、マイケル・ジャクソンが死んだとき、「僕の英語名(マイケル・アンティ)は彼にちなんだ」とツイートしたら、CNNの番組で紹介されました。去年、イラン大統領選でツイッターが世界的に注目されたのは、彼らが英語でツイートしたから。もしペルシャ語だったら? だれも注目しなかったでしょう。

津田:逆に言うと、中国語でツイートするなり翻訳サイトを使うなりして中国の10万人にツイッターユーザーに発信していけば、日本と中国の今の誤解は解けていく、と。

安替:もし中国語ができない人が中国人とツイッターで直接話をしたければ、英語を使うべきです。まだ翻訳サイトにいいものはないので。

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