最新記事

欧米関係

欧州の軍事費削減にアメリカは渋い顔

アフガニスタンでも頼りの同盟諸国はもう戦争やる気なし?

2010年10月19日(火)15時01分
デービッド・ロー

 ドイツのグッテンベルク国防相は、ただいま劇的な防衛改革を推進中。徴兵制を廃止し、ドイツ連邦軍をプロ意識が旺盛で即応力の高い軍隊に生まれ変わらせようとしている。

 ドイツは今後数年で軍事費を大幅に削減する予定だ。イギリスとフランス、イタリアも同様な方針を示している。アフガニスタンでの軍事作戦でアメリカに次ぐ貢献をしているこれらの国々は今、強力な軍隊を維持する方法を見つけ出そうと頭を悩ませている。

 これはアメリカにとっても差し迫った問題。ヨーロッパとアメリカの今後の同盟関係に大きな影響を及ぼすからだ。

 EU27カ国の軍事予算と兵力のデータをみれば、軍事費削減の前からヨーロッパの軍事費がアメリカよりかなり少ないことが分かる。27カ国全体の兵力は180万で、年間予算は2700億ドル相当。アメリカは140万の兵力を維持するために、その倍以上の6600億ドルを投じている。

 ドイツは最近、軍事予算の約6%に当たる80億ユーロを11〜14年に削減すると発表した。フランスは11〜13年に35億ユーロカットする計画。イタリアは今後数年で10%削減する予定だ。

 アメリカが最も神経をとがらせているのは、一番信頼できる同盟国のイギリスが370億ポンドの年間軍事予算を10〜20%削除する方針を掲げていることだ。

 9月後半にベルギーのヘントに集まったヨーロッパの国防相らは、協力関係の強化によって軍事予算を削る方法を探った。軍事費の削減をきっかけに軍の改革を進めるべきだと考える向きもある。

 アメリカの思惑はともかく、今後ヨーロッパは、紛争への介入に関して今までより慎重な態度を示すかもしれない。

[2010年10月20日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECBが金利据え置き、3会合連続 今後の金利動向示

ビジネス

日銀の利上げ見送り、極めてリーズナブルな判断=片山

ビジネス

日産の今期2750億円の営業赤字に、米関税が負担 

ビジネス

米財務長官、年内再利下げに疑問示したFRBを批判 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面に ロシア軍が8倍の主力部隊を投入
  • 4
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 5
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 6
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理…
  • 7
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 8
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 8
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中