【密着ルポ】オープンAIのサム・アルトマンは、オッペンハイマーに匹敵する超人か? 密着して見えてきた、生成AI最前線に君臨する男の素顔と頭の中

THE REAL SAM ALTMAN

2024年2月2日(金)18時50分
エリザベス・ワイル(ニューヨーク・マガジン誌特集担当ライター)

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YCの共同創業者ポール・グレアム DAVID PAUL MORRISーBLOOMBERG/GETTY IMAGES

「失敗は常に嫌なものだが、自分の実力を証明したいときの失敗は本当に嫌だ」と、アルトマンは語る。それでも彼は手持ちの500万ドルに、起業家で投資家のピーター・ティールから得た資金を合わせて、自分のベンチャーキャピタルを立ち上げた。

さらにアルトマンは1年間休みを取り、本を読みあさり、旅行をし、ゲームをして充電した。アシュラム(ヒンドゥー教の修練場)にも行った。「それで人生が変わった」と彼は言う。「今も不安やストレスは多いけど、とてもリラックスしてハッピーに感じられるようになった」

14年、YCの共同創業者であるポール・グレアムがアルトマンをYCの代表に抜擢した。以前からアルトマンを「過去30年間で最も興味深い起業家5人」の1人と評していた。「マイクロソフトを立ち上げた時のビル・ゲイツのように、生まれながらに優秀で自信に満ちている」

アルトマンがYCのトップを務めていた頃、新興企業からの出資依頼は年に約4000件に上っていた。実際に会って話を聞いたのは、そのうち1000件。出資に至るのは200~300件程度で、新興企業は自社株の7%と引き換えに、12万5000ドルほどの資金とメンターによる指導と人脈づくりの支援を受けた。ベンチャーキャピタルの世界では、仕事時間は短く抑えヨットの上から電話をかけるような優雅な働き方をする人もいるが、YCの運営は「1年の半分はキャンプカウンセラーをやっているようなもの」だった。

当時、アルトマンはサンフランシスコの2軒の持ち家のいずれかで、きょうだいたちと暮らしていた。彼は野心や物事を大きな視点から考えることの重要さを説いた。よく知っている人たちの中から人材を起用すべきだし、他人の考えを気にしすぎてはならないというのも持論だった。「肝心なのは、世界を自分の思いどおりにすることは驚くほど高確率で可能だということだ。たいていの人は挑戦しようともしないけれど」と、彼はブログに書いている。

「効果的な利他主義」を信奉

この頃には、アルトマンの生活もかなり華やかなものになっていた。彼は大金持ちになり、超音速機の開発といった少年の夢のような製品に投資した。何か起きたときに避難するための家を買い、銃と金の延べ棒をストックした。自前のマクラーレンで自動車レースに出たこともある。

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