最新記事

健康

日記を書くと血圧が下がる? 健康づくりに役立つ感情日記とは何か

2018年7月13日(金)10時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

jxfzsy-iStock.

<「文章を書くだけで傷の治りが早まる」と聞いて信じられるだろうか。欧米では「expressive writing」「emotional disclosure」と呼ばれ、研究が進んでいる療法だという>

巷には、ありとあらゆる健康法が溢れている。「○○するだけ」など手軽さを謳うものも多く、ましてや「文章を書くだけで傷の治りが早まる」と聞いてすぐに信じられる人は少ないだろう。いかがわしい健康法がまたひとつ登場したのか、と疑ってしまっても無理はない。

ところが、これは新手の詐欺でもなければ、眉唾ものの伝承療法や言い伝えの類いでもない。多くの科学的研究や実験・検証が行われている、れっきとした療法なのだという。

『日記を書くと血圧が下がる――体と心が健康になる「感情日記」のつけ方』(CCCメディアハウス)では、精神科医で医学博士の最上悠氏が、この「日記療法」の効果と具体的な方法について紹介している。本書によれば、文章を書くことの効果は、心だけでなく体そのものにもある。

腰痛や喘息、がんにも効果がある?

最初は著者自身も信じられなかったそうだが、外科手術を受ける前の患者に3日間、1日15分をかけて文章を書いてもらったところ、術後の傷口の回復が早かったという研究結果がある。また、がんの痛みや腰痛、喘息の症状が緩和されたりもするという。

こうした研究はイギリスを中心に欧米では広く知られていて、実は30年以上にわたって研究が続けられているそうだ。しかもその中には、最も厳密な検証法と言われる「RCT(ランダム化比較試験)」や、より信頼性を高めるための「メタ解析」が行われたものも多くある。

欧米では「expressive writing」「emotional disclosure」と呼ばれるように、この療法では感情について書くことがポイントだ。具体的には、「過去に起こった出来事と、そのときに感じたストレスやつらい思い」について書く。

著者はこれを「日記療法」「感情日記」と名付けて、自らも臨床で試すことにした。大動脈解離という大病をした男性に、もう二度と血管が破れないように、血圧をしっかり下げるための手段のひとつとして日記を書いてもらったのだ。

すると3週間後、どんなに薬を調整しても170mmHGより下がらなかった血圧が、100mmHG台前半まで下がったという。著者によれば、その他の患者でも効果を得られている人は少なくない。

感情を抑えていると早死にする?

しかし、なぜ感情を文章にすることが体にも影響を与えるのか? それは、心と体が(多くの人が思っている以上に)密接につながっているからだ。

精神的ストレスは身体面にもさまざまな悪影響を及ぼす。つらい経験や日々の苦悩がストレスになると、それによって頭痛などの痛みが生じたり、ホルモンバランスが崩れたり、内臓疾患につながったりもする。感情日記は、これと同じような作用によって、全く反対の効果を及ぼす。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

金総書記、プーチン氏に新年メッセージ 朝ロ同盟を称

ワールド

タイとカンボジアが停戦で合意、72時間 紛争再燃に

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中