最新記事
SDGs

広島・因島の造船技術がアフリカを救う?...「もみ殻」燃料で見えた新たなビジネスの可能性

CAN SHIPBUILDING TECHNOLOGY SAVE AFRICA?

2025年5月27日(火)14時11分
宇佐見靖子(ライター)
タンザニアでグラインドミルの使い方を指導する「トロムソ」の上杉正章代表取締役

タンザニアでグラインドミルの使い方を指導する上杉(中央) COURTESY OF TROMSO

<精米時に排出される「もみ殻」を活かした固形燃料を作れないか──造船のプロたちの挑戦が遠いアフリカの地で大きく花開いた>

広島県尾道市因島は名高い造船の街だ。だが造船不況に見舞われ、多くの関連企業が経営難に直面した。そんな中、誕生したのがトロムソ社だ。船舶の熱交換器を製造する会社を定年退職した技術者たちが、海のモノづくりの技術を陸で生かせないかと1994年に立ち上げた。

ある時、コメ農家から精米の際に排出されるもみ殻の処分に困っているという話を聞いた。木くずを粉砕した固形燃料のように、このもみ殻で固形燃料を作れないか──。ただ、硬いもみ殻を粉砕するのは容易ではない。


そこで造船業で培った金属加工技術を活用し、もみ殻をすりつぶす部分に特殊な表面加工を施すなど試行錯誤を重ねた。そして2007年、ついにもみ殻固形燃料製造機「グラインドミル」の開発に成功した。

「最初からもみ殻を活用するのではなく、新しいことをしなければ持続可能な経営ができないという切実な思いからのスタートだったと聞いている」。そう語るのは2代目の上杉正章代表取締役だ。

因島生まれの上杉は、一度は島を離れたが、旧知の間柄だった創業者に声を掛けられ、「新しいことにチャレンジできる」とトロムソに飛び込んだ。

しかし当時は、グラインドミルが1年に1台売れるかどうかという厳しい時代だった。

「もみ殻を活用した固形燃料の灰は、肥料として田畑にまくことができ、完全循環できます」と説明しても、「それがどうした」と言われることが多く、風当たりもきつかったと当時を振り返る。ただ、この事業は将来必ず伸びるはずだと踏ん張り続けた。

編集部よりお知らせ
ニューズウィーク日本版「SDGsアワード2025」
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ダウ・S&P続落、FRB議長発言で9

ワールド

米、パキスタンと協定締結 石油開発で協力へ=トラン

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、FRBが金利据え置き

ビジネス

米マイクロソフト、4─6月売上高が予想上回る アジ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 3
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 4
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 5
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 6
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 9
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中