最新記事
SDGs

泡で、船で、AIで...... 海洋プラスチックごみ回収の最新イノベーターたち

2024年4月8日(月)18時10分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)
ザ・グレート・バブル・バリアのバブルカーテン

斜めに走る線がバブルカーテン。ごみは自然に川の片側へ流れる Bubble Barrier Amsterdam ©The Great Bubble Barrier

<ゴミ削減の工夫も大事だが、過去何十年も出してきたプラごみにどう対処するか。新しい取り組みが始まっている>

海洋プラスチックごみは、環境問題の中で頻繁に取り上げられる話題だ。日本でも、一般の人が参加する海岸清掃活動が各地で実施されるようになり、より関心が高まっている。事業として海や川のプラごみ回収を行っている、ヨーロッパ発の先進的な団体を紹介しよう。

「ザ・グレート・バブル・バリア」 泡で川のごみを誘導して回収

オランダのザ・グレート・バブル・バリア(TGBB)は、河川の底に固定した長いゴム製のチューブから多数の泡を出し、そのバブルカーテンで水中のあらゆるごみをせき止める方法を開発した。川に斜めにチューブを設置することにより、ごみがカーテンの片側(片岸)へ自然に流されるため容器を置いておき、ごみをためる。たまったごみは、その地域で処理される。1mm程度のプラごみも集められるという(ただし、川底に埋まったごみは掘り起こせない)。それより小さいマイクロプラスチックが回収できているかは調査中とのことだ。

チューブに送るのは圧縮した周囲の空気。設置場所の状況によるが、電力は可能な限り再生可能エネルギーを使用する。24時間連続稼働も可能だ。川の規模に合わせた最適なカーテンを作ることができ、現在のところ、水深7mまでならチューブが設置できる。

バブルカーテンを設置した川

斜めに走る線がバブルカーテン。ごみは自然に川の片側へ流れる Bubble Barrier Amsterdam ©The Great Bubble Barrier


「河川のごみが海に流れる前に回収」「川の魚や鳥の邪魔にならず、船・ボートの通行にも支障なし」の2点から生まれたこのバブルカーテンは、実証実験でごみ回収率86%を達成した。2019年秋にアムステルダム中心部の運河に1号機を設置し、毎月平均85㎏のごみを回収(2021年のデータ)しているという。

昨年は、EUのプロジェクトとしてポルトガルのアーヴェ川にバブルカーテンのシステムが設置された。最新の設置場所はオランダ北部のハルリンゲンで、今夏には稼働する予定だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

パキスタンがアフガン空爆、子ども9人死亡 タリバン

ワールド

日米首脳が電話会談、日中関係の悪化後初めて 高市氏

ワールド

パレスチナ、過去最悪の経済崩壊 22年分の発展が帳

ワールド

中国の新規石炭火力許可、25年は4年ぶり低水準に 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中