最新記事
SDGs

泡で、船で、AIで...... 海洋プラスチックごみ回収の最新イノベーターたち

2024年4月8日(月)18時10分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

ザ・グレート・バブル・バリアの共同創業者

ザ・グレート・バブル・バリアを設立した4人 ©The Great Bubble Barrier
 

バブルカーテンは、海洋での建設作業時に出る騒音を低減するために使われたりしている。TGBBは、この技術を世界で初めてプラごみ回収に使ったとのこと。2017年に、ボートセーリングやサーフィンが好きな友人同士の女性3人で起業。しばらくして、フィリップ・エアホーン氏(同社のテクノロジー長)も共同設立者に加わった。

筆者は数年前にTGBBを訪れ、共同設立者たちに会った。「水辺のごみをなくさないと動物たちの命が危ないとずっと気になっていて、私たちが行動を起こさなくてはと思ったのです。TGBBの活動によって、プラごみ問題への関心がより高まってほしいです」との言葉が印象に残っている。

TGBBのバブルカーテンは小規模だが、今後、設置数が増えていけば海洋プラごみ回収に一役買うだろう。

「オーシャン・クリーンアップ」 海と河川で、大規模なプラごみ回収

ダイビングをしていた時にたくさんのプラごみを見て「プラごみを回収しなくては」と決心したのは、オランダ生まれのボイヤン・スラット氏だ。氏は2013年、18歳のときに非営利団体のオーシャン・クリーンアップを設立した。氏は2014年国連の環境賞を受賞している。

オーシャン・クリーンアップが研究を重ねて生み出したのは、2種類の装置。TGBBのカーテンのように、河川のプラごみが海に流れる前に回収する装置と、海洋でプラごみを回収する装置だ。「2040年までに、海洋に浮かぶプラごみの90%を除去する」ことを目指し、川や海のプラごみの回収を続けている。4月初めの時点で、全装置で回収したプラごみは940万kg以上に達した。 

河川用の装置「インターセプターズ」は、プラごみの汚染がとりわけ激しい世界の1000の河川を清掃しようと開発された。インターセプターズは、河川の状況に合わせ、数種類が考案されている。容量50立方メートルのプラごみを回収できるボート「インターセプター・オリジナル」は主要な装置だ。東アジアを中心に、すでに15叟以上が導入されている。3月末には、61 本の運河が流れ込むチャオプラヤー川の浄化のためにバンコクで初導入されたばかり。タイでは、バンコク市をはじめ天然資源・環境省なども回収プロジェクトのパートナーになっている。

インターセプター・オリジナル

チャオプラヤー川で稼働する「インターセプター・オリジナル」 ボートに引き上げられたプラごみが、青いコンテナボックスへ自動投入される ©The Ocean Cleanup

船上の太陽光パネルによる発電を電源にした「インターセプター・オリジナル」は、コンテナボックスを積んでいる。ボートにつないだ長いフェンスによって浮遊しているプラごみをボートへと誘導する。流れてきたごみはベルトコンベアーでボート内に引き上げられ、自動でコンテナボックスへと入れられる。ほぼ満杯になると、コンテナボックスを川岸へと運ぶ担当者へメッセージが送信されるという。ごみは処理施設へ運ばれ、コンテナボックスはボートに戻される。

ほかには、小さい河口でU 字型に囲った浮遊フェンスでごみをためる仕組み「インターセプター・バリア」、川の上流と下流に1つずつ浮遊フェンスを設置し、上流側で主なごみをせき止め、下流側で残りのごみをキャッチする仕組み「インターセプター・バリケード」などもある。フェンス内にたまったごみは一挙に回収できる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏 、 ホルムズ海峡に多くの国が軍艦派遣と

ビジネス

イラン情勢注視続く、FRB金利見通しも焦点=今週の

ワールド

イスラエル、レバノンと数日内に協議へ ヒズボラと戦

ワールド

北朝鮮の金総書記、多連装ロケット砲の発射訓練視察=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目のやり場に困る」衣装...「これはオシャレなの?」
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革…
  • 5
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングア…
  • 6
    機内で「人生最悪」の経験をした女性客...後ろの客の…
  • 7
    イラン攻撃のさなか、トランプが行った「執務室の祈…
  • 8
    ファラオが眠る王家の谷に残されていた「インド系言…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 8
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中