最新記事

日本人が知らない 休み方・休ませ方

リモートワークで「在宅社畜」中国の働き方は日本よりマシ?

BETTER THAN JAPAN?

2020年4月16日(木)11時45分
林毅(ライター・研究者)

深夜、オフィスビルの窓辺にたたずむ。成長神話に陰りも(上海) QILAI SHEN-BLOOMBERG/GETTY IMAGES

<コロナ危機の在宅勤務が突き付ける「働く」と「休む」の境界線。お隣・中国の実情を見ると、彼らは西欧を見て羨みつつハードな日々を送っているようだが......。本誌「日本人が知らない 休み方・休ませ方」特集より>

「弾幕」「秒殺」「攻略」......漢字文化を共有する中国には近年、日本から渡った言葉もいろいろある。特に、最近の若者が使う語には日本から輸入されたものが多く、その比較的新しい例が「社畜」だ。1990年に日本で生まれたこの言葉は、2018年の日本のテレビドラマ『獣になれない私たち』が中国でヒットしたのをきっかけに一挙に知られるようになったとされる。

20200421issue_cover200.jpgしかし、この言葉が流行したのはドラマの影響だけではない。中国は元来、日本と同等かそれ以上に休みが少ない上、ここ数年は景気の減速感が日増しに強くなっている。どの会社も業績への圧力は強く、むちゃな成長計画達成のために従業員が過剰に働かされがちな一方、逃げようと思っても以前のように気軽に転職先が見つかるわけでもない。そうした時代の気分に、社畜という言葉はよくマッチしたのだ。

2019年はその軋轢が表面化した年だ。3月頃から始まったIT企業の若手プログラマーたちによる「996(朝9時から夜9時まで、週6日の勤務)」を強制する企業の告発、それに対する馬雲(ジャック・マー)をはじめとしたIT業界の大物の「成功を手に入れるためには、ほかの人と同じように5時に帰るような生活をしていては駄目だ」という根性論的な発言、それへの反発による炎上と、中国社会全体を巻き込んだ大騒動になった。

中国でも労働法や労働契約法などの法律で、超えてはいけない業務時間(1日8時間、週44時間)は定められている。だが実際は機能していない場合が多い。景気がよく、給料が毎年大幅に上がればそれでも黙っていたものが、給料も上がらず残業代も出ず、昼夜問わず働かされて、要らなくなったら残酷な方法で捨てられる......となれば、声を上げる人は出てくる。

長期休暇の裏の過酷な実態

祝日も日本と比べると、数の上では中国のほうが多いように見える。春節と国慶節という年に2回の長期休暇も目立つ。しかし実は長期休暇前後の週末は調整日として出勤になるので、実数は日本とほぼ同じだし、企業ごとに付与される有給休暇も日本より少ないことが大半だ。

加えて休日出勤は一般的にサービス残業扱いか、よくて残業代支給。一応は存在する代休が付与されることも少ない。その上、春節は周囲のプレッシャーから帰省がほぼ義務になっている人が多く、自分で自由に使える休暇は多くないのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米財務長官、アルゼンチン支援は「資金投入ではなく信

ワールド

アプライド、26年度売上高6億ドル下押し予想 米輸

ワールド

カナダ中銀が物価指標計測の見直し検討、最新動向適切

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米株高を好感 半導体関連
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 4
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 5
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 6
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 7
    1日1000人が「ミリオネア」に...でも豪邸もヨットも…
  • 8
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 9
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 10
    AI就職氷河期が米Z世代を直撃している
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 10
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中