最新記事

映画

きざなイケメン俳優が、「一流」になるために必要だった「屈辱」

No More Mr. Nice Guy

2021年12月15日(水)19時08分
サム・アダムズ(スレート誌映画担当)
『レッド・ノーティス』

『レッド・ノーティス』ではうぬぼれ屋の詐欺師を演じる FRANK MASI/NETFLIX ©︎2021; PHOTO ILLUSTRATION BY SLATE. IMAGES VIA 20TH CENTURY FOX, WARNER BROS. PICTURES

<きざな笑顔が抜けないライアン・レイノルズが、スター俳優の仲間入りを果たした「秘策」は、進んで恥をかいたことにあった>

カルチャー担当の編集者として私が最も苦労したことの1つは、ライアン・レイノルズが「いつかきっといい俳優になる」と人々を納得させることだった。

彼が出演した青春映画『アドベンチャーランドへようこそ』は2009年のサンダンス映画祭で話題になったが、このとき注目されたのは若きスター、クリステン・スチュワート。そんななかレイノルズの潜在的な能力を辛口評論家たちに納得させるのは、かなりの難題だった。

だが最近、ようやくうまい説明が見つかった。彼はろくでなしの役が最高なんだ、と。

ニュースサイトのハフポストは今年に入って、レイノルズを「ハリウッドで最も好感度の高いスター」と紹介。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)も、彼は「努力して成功を勝ち取り、家庭も順調な3人のパパ」だと、考え得る中で最高のナイスガイと評価した。

そんな彼だが、映画の中でナイスガイを演じてもなぜかしっくりこない。顔もスタイルも頭のキレもいい白人男性にしては、彼のスターへの道のりは驚くほど険しかった。

これまでレイノルズはロマンチックコメディーからアクション映画、さらにはコミックの実写版に至るまで数々の作品に出演してきた。それらの役に共通するのが、彼のきざな笑顔。どれだけ努力して心優しいヒーローを表現しようとしても、こびを売っているように見えてしまう。

デッドプール役で評価が一変

その評価が一変したのが『デッドプール』だ。『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(09年)で初めてデッドプール役を演じたときの彼は口元を縫われ、きざな笑いを封印していた。

だが16年に再びデッドプールを演じたときには口の縫合を解かれ、笑いも復活。口の悪いアンチヒーローとして、観客に絶え間ないジョークを浴びせた。映画は大ヒットし、R指定映画の商業的可能性をめぐる通念を覆した。

レイノルズは前述のWSJの記事の中で、40歳間近で撮影に臨んだ『デッドプール』が、映画スターの座をつかむ最後のチャンスと自覚していたと語っている。彼はそこで大きな方向転換を図った。生来のきざな笑顔を封印しようとするのではなく積極的に出すことにした、つまり自分のものにしたのだ。

傷ついた顔に赤い覆面をし、気の利いたジョークを繰り出す新生デッドプールは、観客に好意的に受け入れられた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中絶禁止は州憲法違反、米ワイオミング州最高裁が無効

ワールド

米FDA、健康増進目的のウェアラブル端末に対する規

ビジネス

米新興ニンバス、イーライリリーと肥満症経口薬の開発

ワールド

イスラエル外相がソマリランドを公式訪問、ソマリアは
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが「手紙配達」をやめた理由
  • 4
    「見ないで!」お風呂に閉じこもる姉妹...警告を無視…
  • 5
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 6
    「悪夢だ...」バリ島のホテルのトイレで「まさかの事…
  • 7
    若者の17%が就職できない?...中国の最新統計が示し…
  • 8
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 9
    砂漠化率77%...中国の「最新技術」はモンゴルの遊牧…
  • 10
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 10
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中