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コロナ禍におけるアイドルの握手会の変化

2021年3月25日(木)16時15分
廣瀨 涼(ニッセイ基礎研究所)
アイドルグループのパフォーマンス

エンタメ産業の消費者(ファン)が求めているのは「ライブ感」(写真はイメージです) ColobusYeti-iStock

*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポート(2021年3月3日付)からの転載です。

大打撃を受けたエンターテインメント産業

新型コロナウイルスの流行は、多くの産業に打撃を与えた。その中でもエンターテインメント産業は苦渋の時を過ごしている。エンターテインメント産業における多くのコンテンツに共通して言えることは、エンターテイナーと消費者(顧客)が対面もしくは同じ空間を共有すると言う点である。これらコンテンツは以下の5つの特性をもっていると筆者は考える。


(1) 無形性・・・・提供されるサービス(コンテンツ)に形はない

(2) 非均一性・・・提供されるサービス(コンテンツ)の品質は一定ではない

(3) 不可分性・・・消費と生産が同時に行われる

(4) 消滅性・・・・消費した後、形が残らない

(5) 需要変動性・・時期、場所、サービス提供者によって需要が異なる

コンサートを想定するとわかりやすいが、会場に消費者が来演し、その会場で生のエンターテインメントを鑑賞できるという点に、消費者は価値を見出している。そのコンサートのDVDやブルーレイがいずれ販売され、手元に残る(購入できる)としても、人々は前述した5つのコンテンツ特性が生み出す「ライブ感」を消費したいのである。

そのため、空間を共有できないという事はエンターテインメント産業にとって致命的なことなのである。コロナ禍においても、エンターテイナー達はライブストリーミングを使用してコンテンツを配信してきた。昨今では会場のキャパシティを考慮したうえで観客を動員したエンターテインメントも少しずつ提供されつつあり、アフター・コロナという今までとは異なる日常の中で、人々は今まで通りのエンターテインメント消費ができる日が来ることを心待ちにしている。

オンラインミート&グリートとは

しかし、ライブストリーミングを介しても代替できないコンテンツもある。その例が「アイドルの握手会」である。AKB48によるファンとの握手会の成功により、握手会はアイドル市場におけるスタンダードになった。今まで偶像(アイコン)としての存在が大きかったアイドルとファンとの距離が近くなったのである。ファンは握手をすることで、普段はスクリーンの中にいる文字通りの偶像を実際に存在するモノとして認識することができ、握手会はアイドルとファンとの間にあるロイヤリティを強めるイベントとして機能してきた。そのため、実際に触れることができるという価値自体が消費を生み出してきた。しかし、ソーシャルディスタンスのため不特定多数の人との接触が困難となっている今は、「握手会」の継続は不可能な状態が続いている。

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