最新記事

BTSが変えた世界

グラミー賞ノミネートのBTSとその音楽がこんなにも愛される理由

RESPECT YOURSELF!

2020年11月25日(水)11時25分
竹田ダニエル(音楽エージェント、ライター)

どんなことがあっても「それでも人生は続く」というメッセージを込めたリード曲「Life Goes On」は、耳なじみが良くありながらもエレクトロポップやヒップホップを難なく融合させており、シンプルかつエモーショナルなアルバムの幕開けになっている。

さらに日常の中の小さな幸せを見つける大切さをゴスペル調で歌うネオソウル「Fly To My Room」、憂鬱や不安で気分が落ち込み、「ただもう少し幸せになりたいだけなんだ」「大丈夫だなんて言わないで、大丈夫ではないから」と吐露するVが作詞作曲したバラード「Blue & Grey」と、落ち着いた表情の楽曲が続く。

「Skit」では「Dynamite」がビルボードチャート「ホット100」1位になった瞬間の会話が録音されており、「僕は死ぬまで音楽をやろうと思う」と冗談交じりに言うSUGAの音楽に対する姿勢に胸を打たれる。軽快なレトロファンク「Telepathy」には、離れていてもファンとは常に一緒だというメッセージが込められている。

オールドスクールなヒップホップで原点に回帰しながら最先端の爽やかなファンクを融合した「Dis-ease」では、止まることを恐れてしまう心境をJ-HOPEが「職業病」と表現。「Stay」は、大型フェスで楽しみたいような壮大なフューチャーハウスに「つながり」というテーマを載せたもの。そして最後に、人生を祝福するような甘く弾けるサウンドの「Dynamite」へとつながる。

苦しみや葛藤と向き合い、安心や癒やしを取り戻して心身を解放した上で、明るい世界へと導いてくれるのだ。

不安や孤独、喜びや祝福、複雑に入り込む人間的な感情を色鮮やかに描いた今作。どんなことがあっても、ただそこに存在すること、つまり「Be Yourself」、それだけで十分なのだと語りかけてくれる、まさに2020年に最も必要とされていたものが詰まったアルバムになっている。

(筆者はアメリカ在住。音楽レーベルのコンサルティングやアーティストのエージェントのほか、「Z世代とカルチャー」を主に扱うライターとして活動)

<2020年12月1日号「BTSが変えた世界」特集より>

ニューズウィーク日本版 習近平独裁の未来
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年2月17号(2月10日発売)は「習近平独裁の未来」特集。軍ナンバー2の粛清劇は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」強化の始まりか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:戦闘で労働力不足悪化のロシア、インドに照

ワールド

アングル:フロリダよりパリのディズニーへ、カナダ人

ビジネス

NY外為市場=ドル横ばい、米CPI受け 円は週間で

ビジネス

米国株式市場=3指数が週間で下落、AI巡る懸念継続
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 4
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    【インタビュー】「4回転の神」イリヤ・マリニンが語…
  • 7
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 8
    機内の通路を這い回る男性客...閉ざされた空間での「…
  • 9
    中国の砂漠で発見された謎の物体、その正体は「ミサ…
  • 10
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中