最新記事
日韓関係

韓国・李在明大統領の対日政策転換 石破首相との初会談から読み解く現実主義外交とは

2025年6月18日(水)12時57分
佐々木和義
初めての首脳会談を行った石破首相と李在明大統領

初めての首脳会談を行った石破首相と李在明大統領 MBN / YouTube

<良好な日韓関係はいつまで続く?>

韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は17日(現地時間)、カナダで開催された先進7カ国首脳会議(G7サミット)で、石破茂首相と就任後初の韓日首脳会談を行った。

李大統領は会談冒頭、「この前、電話で話したが、このように直接お会いできて嬉しい」と挨拶。「韓国では日本と韓国との関係を『近くて遠い国』とも言う。まるで前庭を一緒に使う隣の家のように切っても切れない関係にある」と述べたうえで、「小さな違いや意見の違いがあるが、そのような違いを越えて韓国と日本が色々な面で互いに協力し、互いに役に立つ関係に発展していくことを期待する」と語った。

石破首相は「今回の大統領就任、心よりお祝い申し上げる」と祝意を表明し、「今年は(韓日)国交正常化60周年の非常に記念碑的な年」と述べた。関西万博について「最も多くの方は韓国から来ている」と紹介し、「両国間の協力と共助がこの地域そして世界のためにより多く役に立つような関係になることを心より期待する」と応じた。

今回の会談では過去の歴史問題についてはあまり議論されず、韓国大統領室関係者は「過去の問題についてはよく管理していき協力をさらに育てて未来志向的関係を築いていこう」との話し合いがなされ、「概してここに共感を成した」と説明した。

今回の会談は李大統領就任後わずか14日で実現し、韓国新政府発足後の韓日首脳会談としては歴代で最も早い水準となった。尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領は就任4カ月後、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領は就任2カ月後に日本の首相との会談を行っていた。

李在明の対日政策転換の背景は?

6月3日の韓国大統領選挙前、李在明政権が発足すると反日政策を加速させるという憶測が流れたが、現実には李在明大統領は就任直後に石破首相と行った電話会談で「共存できる方向を模索していく」と述べ、SNSに「新しい時代が求める未来志向の韓日関係を構築していく」と投稿するなど良好な日韓関係を維持する意向を示し、今回の対面での首脳会談も、その形が深まるような姿を見せている。

李在明大統領の外交姿勢は就任後に電話首脳会談を行った順序からも見て取れる。文在寅元大統領は就任後の電話会談を米国、中国、日本の順で行い、日本より中国を優先させる意向を示したが、尹錫悦前大統領は米国、日本、中国の順で行った。李在明大統領も米国、日本、中国の順で電話会談を行っており、中国より日本を優先させる意向を示したとみられている。

韓国で日本製品不買運動、いわゆる"ノージャパン"が吹き荒れた2019年当時、李在明大統領は京畿道知事として日本依存からの脱却を掲げて、素材や部品の国産化を推進し、日本を「敵性国家」と評するなど強硬な対日姿勢を見せていた。そんな当時からすれば今の李在明大統領の対日政策は豹変にも見えるが、筆者にとっては意外ではない。

対談
為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 セカンドキャリアの前に「考えるべき」こととは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ヘッジファンド、銀行株売り 消費財に買い集まる=ゴ

ワールド

訂正-スペインで猛暑による死者1180人、昨年の1

ワールド

米金利1%以下に引き下げるべき、トランプ氏 ほぼ連

ワールド

トランプ氏、通商交渉に前向き姿勢 「 EU当局者が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 2
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中