最新記事

カルチャー

トランプも敵わない、Kポップファンの知られざるパワー

K-Pop Has Always Been Political

2020年07月28日(火)16時00分
ジョシュア・キーティング

BTSの熱烈なファン「アーミー」は、アーティストを応援する以上のパワーを持つようになった MYDAILY/AFLO

<アーティストを応援するだけにとどまらず政治的な影響力も持ち始めた韓流ファンの底力>

この秋、再選を目指すドナルド・トランプ米大統領が、新型コロナウイルス感染症の影響で控えていた政治集会を再開したのは6月20日のこと。事前の発表によると、無料チケットの申し込みは100万人を超え、会場に入り切れない人のために屋外にも舞台が設置された。

ところが当日、オクラホマ州タルサの会場はガラガラ。「会場に入り切れない人」も事実上ゼロだった。その原因とされたのは、トランプを嫌う全米のKポップファンと若者が大量のチケットをオンライン予約し、当日姿を見せなかった、というものだ。

アメリカの政治ニュースがらみで「Kポップファン」という言葉が登場したのは、これが初めてではない。5月末から再燃したBLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大事)運動でも、Kポップファンの組織力が注目を集めた。

ダラス市警が「デモ隊による違法活動」の動画通報を促すアプリをリリースしたところ、Kポップファンがお気に入りのアーティストの動画を大量に投稿して、アプリを役立たずにしてしまったというのだ。男性グループBTS(防弾少年団)がBLM運動に100万ドルを寄付したのを受け、彼らのファンも独自に100万ドルを集めて寄付したニュースも話題になった。

Kポップといえば、やたらと人数の多いグループが、一糸乱れぬダンスと歌を披露するジャンルというイメージが圧倒的に強い。そんな彼らのファンが、なぜ政治的な活動に(独特の形で)関与するようになったのか。

実は、Kポップは昔から政治と切っても切れない関係にある。

韓国政府が音楽をはじめとするポップカルチャーに投資するようになったのは、1990年代末の金大中大統領時代のこと。97年のアジア通貨危機で経済に大打撃を被った韓国は、巨額のインフラ投資をすることなく、迅速に強化できる産業を探していた。

政府主導で韓流が成功

そこで白羽の矢が立ったのが、映画や音楽などのポップカルチャーだった。文化省の予算が大幅に増やされ、文化活動に投資する機関がいくつも設立された。

こうして生まれた「韓流」は、世界的な成功を収めてきた。今や韓国は世界有数のポップカルチャー大国だ。アジア全域で高視聴率を稼ぐテレビドラマにも、映画『パラサイト 半地下の家族』の米アカデミー賞作品賞受賞にも、Kポップの世界的な人気にもそれは表れている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    加工した自撮り写真のように整形したい......インス…

  • 3

    2つのドラマでも真実に迫れない、「キャンディ・モン…

  • 4

    マイケルが残した「虐待の連鎖」の悲しい謎──被害男…

  • 5

    2100年に人間の姿はこうなる? 3Dイメージが公開

  • 1

    加工した自撮り写真のように整形したい......インス…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 4

    2100年に人間の姿はこうなる? 3Dイメージが公開

  • 5

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 1

    「エプスタインに襲われた過去」と向き合って声を上…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    加工した自撮り写真のように整形したい......インス…

  • 4

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 5

    やはり「泣かせた」のはキャサリン妃でなく、メーガ…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:世界最高の投手

特集:世界最高の投手

2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍