アングル:戦闘で労働力不足悪化のロシア、インドに照準
モスクワの工場で、チュールを縫うインドから来た労働者ら。1月20日撮影。REUTERS/Anastasia Barashkova
Andrew Osborn Ekaterina Maksimova
[モスクワ 11日 ロイター] - スポーツバッグを抱え疲れ果てた様子のインド人男性たちがある晩、モスクワの国際空港の混雑した入国審査で並んでいた。彼らは仕事を得るためにウズベキスタンを経由して2700マイル以上の道のりを飛んできたのだった。
「1年間の契約だ。ゴミ処理の仕事だ。給料がいいんだ」とその中の一人、アジットさんは英語で語った。
当局によると、ロシアでは差し迫って少なくとも230万人の労働者が不足している。ウクライナへの侵攻で悪化したロシアの労働力不足は、伝統的な外国人労働力の供給源である中央アジア各国で埋められなくなっている。ロシア政府は新たな人材供給元として、インドに目を向けている。
<インド人流入が労働力不足を補う>
ロシアがウクライナに部隊を派遣する前年の2021年、インド人に承認された就労ビザ(査証)は約5000件だった。就労ビザは昨年に約7万2000件に急増し、ビザが必要な外国人労働者に対する年間割当枠のほぼ3分の1を占めた。
インド人労働者を受け入れる企業のディレクター、アレクセイ・フィリペンコフ氏は「インド出身の駐在従業員が現在最も人気がある」と話した。
フィリペンコフ氏によると、ビザを必要としない旧ソ連の中央アジア各国出身の労働者たちは十分な人数がロシアに来るのをやめてしまったという。しかしながら、公式統計によると、こうした労働者たちは昨年ビザを必要としない合法的な外国人労働者約230万人の大半を依然として占めている。
しかし、ルーブル安、移民法の厳格化、そしてロシアの政治家からの激しい反移民的な言辞のために、中央アジア各国出身者の労働者の流入が減少しており、ロシア政府は他の地域出身の労働者に対するビザの割当枠を拡大している。
未熟練労働力の供給源としてインドを選んだことは、ロシア政府とインド政府の間の強力な防衛・経済関係を反映している。
インドは西側各国の制裁のために他の場所だと容易に売却できないロシア産原油を格安で購入してきたが、こうした状況は今や疑問符がつくかもしれない。
ロシアのプーチン大統領とインドのモディ首相は昨年12月、インド人がロシアで就労するのが容易になる合意に署名した。
ロシアのマントゥロフ第1副首相は当時、ロシアが「無制限の数」のインド人労働者を受け入れる可能性があるだろうと話していた。マントゥロフ氏によると、製造業で少なくとも80万人、サービス・建設部門でさらに150万人の人手が必要だという。
<ロシアの工場や農場で働くインド人>
モスクワの繊維企業「ブレラ・インテックス」はカーテンや寝具を製造するためにインド人を含む南アジア出身の労働者を10人程度雇い入れた。
インド出身のガウラブさん(23)はミシンの前に座りながらロシアで働き始めて3カ月になると話した。「こっちに来れば仕事も給料もいいと言われた。ロシアの生活はとても快適だ」と語った。結婚して子どもが2人おり、インドで暮らす家族に毎日電話し会いたいと伝えているという。
オーナーのオルガ・ルゴフスカヤ氏はインド出身の労働者について手本や指導の助けを借りて短期間で仕事を覚え、とても意欲的だと評価。「やってきた人の中にはミシンの電源の入れ方さえも知らない人がいたが、2―3カ月すればきちんとした完成品の縫製を任せることができる」と明かす。
モスクワ郊外のセルギエフスキー農場もまたインド人労働者に頼り、野菜の加工や荷造りをするために1カ月当たり約5万ルーブル(約660ドル)の給料で雇っている。農場は、地元住民ならば働いてくれない給料水準だと説明する。
「この農場で働き始めて1年になる」というパンジャーブ地方出身のサヒルさん(23)は「インドは給料が少ないが、ここではたくさんもらえる」と話す。
ただ、トランプ米大統領が今月発表したインドとの貿易協定合意を巡り、ロシア産原油の購入を停止するようインドに圧力をかけている。このことがロシア政府のインド人労働者の受け入れ意欲をくじく可能性があるだろう。
だが、インド政府が原油購入をどのように調整するかどうか現時点で不透明だ。ロシア政府は緊張の兆しが出ていることを否定している。





